研究課題
(1) 位置検出型TES型マイクロカロリメータの開発20 mm x 20 mm x 1 mm のビスマス吸収体に4つのTES(Transition-Edge Sensor)温度計を取り付けて2次元の位置検出型TES型マイクロカロリメータを製作したが、既存の素子のメンブレンでは吸収体の重量を支えることが難しかった。そこで、今後厚いメンブレンの素子を製作する場合の熱伝導への影響を調べる目的で、厚さ10 umと12 umのメンブレンの素子を設計・製作し、メンブレンの熱伝導度を測定したところ、既存の5 um厚のメンブレンの場合と異なりメンブレンが厚くなると熱伝導度にTES温度計から熱浴までの距離が影響することが明らかになった。(2) シミュレータの開発位置検出型TES型マイクロカロリメータでは信号波形により吸収体へのガンマ線入射位置を推定する。従来は信号波形のシミュレーション結果のみを位置検出性能のシミュレーションに利用していたが、本年度は同シミュレータで発生させた雑音を信号波形のシミュレーション結果に加えることで、雑音の影響まで含めた位置検出性能のシミュレーションを行った。20 mm x 1 mm x 1 mmの吸収体の1次元の位置検出型TES型マイクロカロリメータにおいて、雑音の影響下でも1 mm程度の位置分解能が得られる見込みであることがわかった。さらに、放射線挙動計算コードPHITSを利用して、位置検出型TES型マイクロカロリメータの吸収体内部でのガンマ線の挙動をシミュレーションすることで、1つのガンマ線が吸収体の複数の場所でエネルギーを付与する場合についても調べた。
2: おおむね順調に進展している
位置検出型TES型マイクロカロリメータの位置分解能について雑音や吸収体内部での複数回の反応を考慮した上でも、1 mm程度の位置分解能が実現できる可能性が見込まれることが明らかになった。
今後は2次元の位置検出型TES型マイクロカロリメータ用の大面積の吸収体を支えることが可能な厚いメンブレンを持つTES素子を製作して2次元の位置検出型TES型マイクロカロリメータを製作し性能評価を行う。さらに、位置検出型TES型マイクロカロリメータの組み立て方法を改良することで、ビスマスだけでなく鉛をガンマ線吸収体とした1次元の位置検出型TES型マイクロカロリメータにおいても両端読み出しを可能にする。また、信号波形に雑音を加えたシミュレータの開発を引き続き行う。
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IEEE Transactions on Applied Superconductivity
巻: - ページ: 1~5
10.1109/TASC.2023.3263135