研究課題/領域番号 |
21H03740
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
平 義隆 分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 准教授 (60635803)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超短パルスガンマ線 / 逆トムソン散乱 / 逆コンプトン散乱 / 陽電子 / 寿命運動量相関測定法 |
研究実績の概要 |
令和4(2022)年度は、昨年度UVSOR-IIIにおいて開発したガンマ線誘起寿命運動量相関測定法(Gamma-ray induced age-momentum correlation: GiAMOC)を用いて、3種類の試料を測定した。1つ目の試料は、陽電子寿命測定用の標準物質として産総研計量標準総合センターが供給しているステンレス鋼であり、内部に欠陥の無い試料である。2つ目は、公称ひずみ10%まで延伸したIF鋼であり、内部に欠陥が導入されている。3つ目はBaF2結晶である。GiAMOCでは、消滅ガンマ線のエネルギー広がり(Sパラメータ)の時間発展を測定できるため、陽電子消滅サイトに関する詳細な情報を得ることが可能である。消滅ガンマ線のエネルギー広がりが小さいとSパラメータは大きくなる。ステンレス鋼では、Sパラメータの時間発展は一定となる結果が得られた。これは、欠陥が無いために陽電子の消滅サイトが1種類であることに起因する。IF鋼では、Sパラメータが時間経過と共に大きくなる結果が得られた。これは、陽電子の消滅サイトが2種類存在し、寿命の長い成分がSパラメータの大きい空孔での陽電子消滅に相当することを示している。BaF2結晶では、Sパラメータが時間経過と共に僅かに低下する結果が得られた。これは、ポジトロニウム(Ps)の形成が関与していると考えられる。Psには、パラPsとオルソPsの2種類あり、オルソPsの方がパラPsより寿命が長くエネルギー広がりが大きくSパラメータが小さい。そのため、時間経過と共にSパラメータが大きくなる欠陥での消滅過程とPs特有の消滅過程が競合して前述のような結果になったと考えられる。GiAMOCシステムの開発とこれら試料の測定結果をまとめて論文に発表した。 また、GiAMOCの検出器対を2倍に増やす事で、計数率が2倍に向上する事にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4(2022)年度の研究実施計画に記載した内容を達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
令和5(2023)年度は、開発したGiAMOC計測システムを用いてPsが形成される合成石英の測定を行い、消滅ガンマ線のエネルギー広がりの時間発展が理論通りの変化を示すことを確かめる。BaF2結晶と異なり合成石英では陽電子は、パラPs、自由陽電子、オルソPsのいずれかの過程で消滅する。そのため、Sパラメータは時間経過と共に減少し、一定となる。開発したGiAMOCにおいてこのような結果が得られることを確認する。
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