令和5(2023)年度は、UVSOR-IIIにおいて開発した高純度ゲルマニウム検出器とBaF2シンチレータの検出器対が2組のガンマ線誘起寿命運動量相関測定法(Gamma-ray induced age-momentum correlation: GiAMOC)を用いて、ポジトロニウム(Ps)が形成される高純度合成石英の測定を行った。直径5 mmの鉛コリメータを通過した最大エネルギー6.6 MeVの超短パルスガンマ線を大きさ30×10×10 mmの合成石英に照射し、合成石英から発生する消滅ガンマ線のエネルギー広がりと放出時間分布を分解能12bitのデジタルオシロスコープを用いて同時測定した。 合成石英の中で陽電子は、パラPs、自由陽電子、オルソPsのいずれかの過程で消滅する。パラPsは、125 psの寿命で消滅し、オルソPsの寿命は真空中で142 nsであるが、周囲の電子とのピックオフ消滅により1~3 nsの寿命で消滅する。パラPsのエネルギー広がりはオルソPsよりも小さいため、消滅ガンマ線のエネルギースペクトルのピーク形状を表すSパラメータが大きくなる。したがって、Sパラメータは時間経過と共に減少し、1 ns以上では一定となる。 開発したGiAMOCを用いて合成石英を合計35時間測定した。計数率は6 cpsであった。測定した合成石英のSパラメータの時間経過は理論通りの変化を示しており、GiAMOCの有用性を示すことができた。
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