今年度は、まず、斜周期分極反転構造をもつニオブ酸リチウム結晶を用いて、非線形光学効果である自発的パラメトリック発生過程による周波数300GHzのサブテラヘルツ光子の発生実験を行った。励起光源として繰り返し30Hz、パルス幅約900ps、波長1064.3nmでパルスエネルギー約5mJのマイクロチップレーザーを用いて実験を行った。その結果、後進波位相整合によりアイドラー光として波長1065.5nmの近赤外光を発生することに成功した。この結果から、励起光に対する差周波エネルギーに相当する周波数300GHzのサブテラへルツ光が発生していることが分かったが、実際にテラへルツ光検出用のショットキーバリアダイオードでも優位な信号を検出できた。 次に斜周期分極反転ニオブ酸リチウム結晶を2つ用意し、2つの結晶を一つの励起光源で励起することで2つの自発的パラメトリック過程を同時発生させ、それぞれの結晶において発生した近赤外域のアイドラー光を用いて干渉計を構築し、古典的な干渉ではない、誘導性コヒーレンスに起因する量子干渉が生じるかの検証実験を行った。しかしながら現時点で明確な量子干渉波形が観測できていない。考えられる原因として、近赤外アイドラー光の時間・空間的なオーバーラップや、励起光源のパルス間のわずかなエネルギー揺らぎ、さらに光学定盤の微弱な振動等も抑制することが重要であると考えられ、今年度はあらゆる実験光学系の調整や安定性などを見直し、再実験を行う。
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