研究課題/領域番号 |
21H03780
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
温 文 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (50646601)
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研究分担者 |
今水 寛 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30395123)
前田 貴記 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40296695)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 運動主体感 / 探索 / 利用 / 統合失調症 / 神経基盤 / 数理モデル |
研究実績の概要 |
2021年度の研究では、運動主体感の生起の個人差と運動学習の効率との関連に着目し、興味深い成果を得ることができました。 まず、運動主体感の生起において、自己の制御感覚に敏感な個人が運動学習をより速く進める傾向があることを発見しました。これは、自己の制御感覚が運動学習の効率に関与している可能性を示唆しています。運動主体感は、運動制御の副産物ではなく、運動学習において重要な要素であることが明らかになりました。 さらに、発達期の子供(5歳~13歳)を対象に、運動発達と運動主体感の知覚の関係を調査しました。その結果、運動発達と運動主体感の知覚には相関関係が存在することが示されました。つまり、運動主体感の高い子供ほど、運動の発達能力も高い傾向があることを明らかにしました。この知見は、運動主体感が単なる主観的な感覚ではなく、運動学習や運動発達において重要な役割を果たしていることを示しています。制御の探索と利用の過程において、主体感の位置づけを示しました。 以上の成果は、運動主体感の生起の個人差と運動学習の効率、および運動発達と運動主体感の関係に関する重要な知見を提供しました。これらの結果は、将来的には個別化された運動学習や運動教育の開発につながる可能性があります。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、運動主体感の生起の個人差と運動学習、および運動発達との関連に関する貴重な知見を提供しました。この成果は、国際学術誌Scientific Reportsに2編の論文として掲載されました。これにより、研究の信頼性と学術的な重要性が裏付けられました。 最初の論文では、自己の制御感覚に敏感な個人が運動学習をより速く進める傾向があることが示されました。これは、運動主体感が運動学習の効率に関与していることを示す初めての証拠です。この知見は、個別化された運動学習アプローチの開発において重要な役割を果たす可能性があります。 2つ目の論文では、発達期の子供を対象に運動発達と運動主体感の関係を明らかにしました。運動主体感の高い子供ほど、運動の発達能力も高い傾向があることが示されました。これは、運動主体感が単なる主観的な感覚ではなく、運動発達においても重要な要素であることを示唆しています。この知見は、運動教育や発達支援のプログラムにおいて、運動主体感の向上が子供の運動能力向上に寄与する可能性を示唆しています。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると評価できます。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、主体感の探索過程と運動学習の関係性をより深く理解するために、数理モデルを活用します。具体的には、主体感の探索過程を数学的に表現し、個人差を表すパラメータを抽出することを目指します。これにより、主体感の形成や運動学習の効果に影響を与える要因を明確化し、個別の特性や能力に応じた最適な運動学習の手法やアプローチを提案することが可能になります。 さらに、主体感の探索から利用への遷移をモデル化することにも注力します。主体感の探索過程は、個人の感覚や認知の変化、および外部のフィードバックや報酬によって影響を受けると考えられます。そこで、主体感の探索から利用への切り替えを制御するポリシーを明確化し、様々な要素が探索から利用への遷移に与える影響を解明します。 本研究には、数理モデルの構築やデータ分析のための先端的な手法や技術を駆使します。また、実験データや運動行動の計測データを収集し、モデルの検証やパラメータの最適化を行います。さらに、個人差や年齢、性別などの要因を考慮したデータの分析や比較も行い、より一層実用的な成果を得ることを目指します。
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