研究課題/領域番号 |
21H03780
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
温 文 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (50646601)
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研究分担者 |
今水 寛 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30395123)
前田 貴記 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40296695)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 運動主体感 / 探索 / 利用 / 統合失調症 / 数理モデル / 神経基盤 |
研究実績の概要 |
本研究では、主体感の探索と利用の行動、および神経メカニズムに関する仮説を検証することを目的としています。特に、人間が環境から主体感を能動的に獲得していく過程を明らかにすることに注目しました。人間は最適な報酬を得るために行動する主体であり、その行動と主体感の相互作用が行動の認知を理解する上で重要であると考えられます。 昨年度の研究では、まず健常者に対してジョイスティックの課題を実施しました。この課題を通じて、運動主体感の生起において、運動感覚入力と目標達成を統合する過程をベイズモデルで説明する研究を行いました。その結果、人間は運動感覚情報と目標達成の情報を統合し、運動主体感を判断する過程は、ベイズモデルで十分説明できることが分かりました。このような成果に基づいて、運動主体感の生起においける個人差をモデルベースで理解し、予測することが可能になりました。 さらに、統合失調症患者を対象に認知検査課題を実施しました。健常者との比較から、統合失調症患者の認知的な違いや探索行動の異常を明らかにしました。具体的には、参加者のマウスの動きを機械学習の手法で解析し、動きの特徴の次元を圧縮し、その次元の多様性を評価しました。その結果、統合失調症患者は環境の制御に対して柔軟な行動パターンの変化が見られず、主体感の異常において、知覚や認知が病気によって影響されているだけでなく、行動選択も大きく影響されていることが唆されました。 現在は、昨年度の研究成果をまとめ、国際ジャーナルへの投稿を進めています。この研究により、主体感と行動のメカニズムに関する新たな視点とアプローチが提案され、人間の行動選択と感覚処理を説明できる数理モデルの確立に寄与することを期待しています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、主体感の探索と利用の過程を理解するために、人間の行動選択と感覚処理を説明する数理モデルの確立を目指しています。 昨年度の研究では、参加者のマウスの動きを機械学習の手法で解析し、動きの特徴の次元を圧縮し、その次元の多様性を評価することで、主体感の異常や行動パターンの変化を明らかにしました。このようなデータ駆動型のアプローチにより、従来の研究では捉えづらかった主体感の探索と利用のメカニズムを客観的に分析することが可能となりました。 さらに、主体感の探索と利用に関するモデル化の研究が進展しています。昨年度の研究では、運動主体感の生起における運動感覚入力と目標達成を統合する過程をベイズモデルで説明する研究を行いました。これにより、人間が環境から主体感を能動的に獲得していく過程を明らかにする一歩を踏み出しました。現在は、このモデルをさらに発展させ、主体感の探索と利用の過程を包括的に理解するための数理モデルの構築に取り組んでいます。 以上のように、機械学習とモデル化の研究の進展により、本研究では新たな知見を生み出すことができています。データ駆動型のアプローチと数理モデルの構築により、主体感の探索と利用の過程をより深く理解し、人間の行動選択と感覚処理に関する重要な洞察を得ることが期待されます。以上のことより、本研究はおおむね順調に進展していると言えるでしょう。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、主体感の探索と利用の過程において神経基盤の解明に重点を置きます。具体的には、モデルによって明らかにされた個人差を表現するパラメータに関連するバイオマーカーの解明に取り組む予定です。これにより、主体感の形成や異常が起きた場合の背後にある神経プロセスを理解することが期待されます。 さらに、運動主体感の探索行動の多様性に関連する神経基盤の解明において、fMRIの手法を活用します。fMRIを使用することで、脳内の特定の領域やネットワークが主体感の探索と利用にどのように関与しているのかを詳細に調査します。この手法によって、行動パターンの多様性や主体感の変容と関連する神経活動のメカニズムを解明することが可能となります。 さらに、統合失調症の患者や他の神経精神疾患を含むさまざまな参加者を対象にした実験を行い、主体感の探索と利用の過程における神経基盤の異常を明らかにします。これにより、疾患グループと健常者の間の神経的な差異や、主体感に異常が生じる場合の背後にある神経プロセスの変容を理解することができます。
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