研究課題/領域番号 |
21H03792
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
吉野 大輔 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80624816)
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研究分担者 |
船本 健一 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (70451630)
郷 勇人 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (30443857)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胎盤オルガノイドチップ / マイクロ流体デバイス / 血圧刺激 / 血管障害 |
研究実績の概要 |
2021年度は、(1)ヒト胎盤オルガノイドチップの開発と(2)高血圧刺激に対する血管障害メカニズムの解明に取り組んだ。 (1)について、まず、ヒトの胎盤構造を再現した流路をコインサイズのチップ内に再現したマイクロ流体デバイスを設計・試作した。ポリジメチルシロキサンによってマイクロ流体デバイスを作製し、ヒト妊娠性絨毛癌細胞株(JEG3)、臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)を3次元的に配置することで胎盤構造の再現を試みた。細胞の配置後5日程度でJEG3の融合が観察され、栄養膜モデルの形成が促された可能性がある。今後はJEG3、HUVECsに加え、母体側血管としてヒト子宮微小血管内皮細胞を用いて、胎盤構造のより詳細な再現を試みる。 (2)については、これまで不明瞭であった持続的な高血圧刺激に対する血管障害のメカニズムについて、血圧刺激誘導性のアポトーシスの発現とそれに関連するシグナル伝達経路の一部を特定することができた。高血圧刺激の負荷時間が12時間を超えたあたりから、細胞質に局在したままのERK活性が認められ、それによってアポトーシス誘導に関わるCaspase-3の活性化が引き起こされることがわかった。また、高血圧刺激によるDNAの損傷、老化は確認されなかった。一方で、血圧刺激条件においては長時間の負荷においてGAPDHの発現増加が確認された。今後は、これらのタンパク質発現変化について詳細な解析を行い、持続的な高血圧刺激に対する血管障害のメカニズムを明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト胎盤オルガノイドチップの基盤となるマイクロ流体デバイスの設計・試作を完了し、3次元的な細胞培養にも支障がないことを確認できた。また、持続的な高血圧刺激に対する血管障害のメカニズムについても大枠の部分でシグナル分子機構の解明の糸口を明らかにできたため、概ね当初の計画通り、研究が遂行できていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、開発した胎盤オルガノイドチップと独自に開発した流れ負荷培養系(Yoshino et al, J Biomech Sci Eng 2013)と静水圧顕微鏡法(Yoshino et al, Commun Biol 2020)を組み合わせることで、血行力学環境を精密に制御可能な妊娠高血圧症のin vitroモデルを確立する。高血圧環境下のヒト胎盤オルガノイドの培養と動態観察を長期間(1~2ヶ月程度)実現する。 血管内皮細胞の血圧刺激感知・応答機構の時空間的変化に着目して、高血圧刺激により血 管障害が発生するメカニズムをより詳細に明らかにする。 最終的には上記2項目の研究を組み合わせ、本研究の最終目標である「高血圧環境下の胎盤・臍帯血管形成不全の分子メカニズムの解明」を実現する。
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