研究課題
増殖が可能な細胞には張力ホメオスタシスと呼ばれる、細胞内部の物理的な張力を一定に維持する性質が備わっている。これは細胞が周囲環境の変化に対して適応的に振る舞うための基盤となっており、その能力の不全は様々な疾患との関連をもつことが指摘されている。本年度は、前年度までに開発した改良FRAP法(Continuum mechanics-based fluorescence recovery after photobleaching, CM-FRAP法)について論文発表のための追加実験をするとともに、これまで明らかとなっていた測定精度上の問題について改良を行った。具体的には、光褪色領域の自動追跡アルゴリズムについて、測定の各時刻において測定しきい値を変更できるようにした。実験結果を新旧の方法で比較し、特に細胞骨格が入り組んだ空間領域においては新しい方法においてより高い精度で定量化できることを確認した。また、熱統計力学についても前年度までに準備をした論文について、ジャーナルでの採択に向けていくつかの対応を行った。また、細胞の張力ホメオスタシス現象において支えられる力の大きさに応じて細胞骨格の構成成分が変化する現象を相転移と見なし、材料熱力学的観点から数理モデル化を行い、その現象の背後にある物理メカニズムを説明するための解析を行った。これにより、細胞骨格が特定の構成則(力の大きさに応じて見た目の弾性率が変化すること)を仮定すると、実際の現象を論理的に説明できることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り研究が進み、論文発表も行うことができたため。
開発したCM-FRAPに空間統計学の方法を組み合わせることにより、より適用の範囲や汎用性の高い手法へと発展させる。それを用いて様々な条件で測定を行い、熱統計力学に基づいて解析を行う。
すべて 2022 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 6件、 招待講演 12件) 備考 (1件)
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