研究課題/領域番号 |
21H03799
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
陣崎 雅弘 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (80216259)
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研究分担者 |
秋田 大宇 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10383697)
山田 稔 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (60365434)
山田 祥岳 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60383791)
稲本 陽子 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (70612547)
秋田 恵一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (80231819)
大竹 義人 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (80349563)
橋本 正弘 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (20528393)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 立位 / CT / 嚥下 / 排尿 / 歩行 / 姿勢 / 前立腺肥大 |
研究実績の概要 |
健康長寿の時代において機能性疾患の病態解明は重要性が高くなっている。人体の機能は臥位でCTやMRIを用いて4次元解析が可能になっている。嚥下、排尿、運動の3つの機能は立位・座位でないと評価が難しい。初年度は、この3つの機能評価の為の検査法を確立することを目標とした。 嚥下は、座位撮影用の椅子が必要で、その設計を完了した。撮影法は、半座位を参考に3.3秒の連続スキャンで合図と共に撮影開始することで、被曝線量2.0mSV程度と自然被ばく線量(2.4mSv)より少ない線量で嚥下の動態を解析できることを明らにした。 排尿は、膀胱収縮と尿道形態の解析を目的としている。正常群での撮影経験はあったが、今回排尿障害群を検討した結果、排尿初期に2秒間隔、後半で5秒間隔の撮影法を採用した。被曝線量は約3.5mSvで、かつての胸部CT(7mSv)と比べても極めて低い。蓄尿量の確認のためには簡易的な超音波装置を活用し、排尿時には全自動尿量計フローマスターで排尿量や秒間あたりの尿量も計測することで、確実性が高く、定量性も高い検査になった。また、尿道の形態評価は、従来は直接尿道造影法で行われていたが、亀頭から造影剤を逆行性に注入する侵襲性の高い検査である。今回の方法は、造影剤を経静脈注射して排尿時に撮影をするだけであり、非侵襲的な評価方法が確立できた。患者数の多い前立腺肥大において尿道狭窄の状態評価への活用が期待できる。 歩行機能については、まず歩行に基本になる立位での筋肉量解析姿勢の評価を行った。姿勢解析は足下に床反力計を置き、荷重の床反力ベクトルを調べたところ、足関節中心前方、膝関節中心前方、股関節中心の後方、両側骨頭中心部を通過することがわかった。重心ベクトルの方向を立体的に解析できたのは初めてであり、姿勢の基準評価となりえる。今後、姿勢の軸変化と疾患の関係や歩行機能との関係を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つの機能について順調に検査法を確立できた。コロナ禍において、正常被検査者の病院への立ち入りが制限され、患者の受診も制限される中で、予定通り検査法を確立できたことの意義は大きい。 特に排尿機能においては、排尿障害の原因が、尿道狭窄なのか、膀胱収縮能なのかの鑑別が可能であることがわかった。現在は、高齢男性の排尿障害は、問診や残尿量から前立腺の経尿道的切除術(TUR-PT)を施行されることが多いが、必ずしも全員が改善するわけではなく、膀胱収縮能に問題がある人が混在している。立位CTで非侵襲的に排尿動態を見れば、排尿障害の原因を特定できるので、TUR-PTを含めた適切な治療選択の決定に役立つことが期待できる。 歩行機能では、臥位CTでは筋肉量計測ソフトはできていたが、立位CTのデータでの解析ソフトはなかった。今回立位症例のデータを用いて、筋肉量解析ソフトの初期版を作成できたことも大きい。臥位CTとは異なる立位CT特有のアーチファクトや立位CT特有の筋肉の形状に対応することができた。また、姿勢解析はこれまで適切な評価法がなかったので、床反力計と立位CTの組み合わせは、今後の基準になる手法であると思える。
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今後の研究の推進方策 |
嚥下機能については、嚥下障害の患者の撮影に入っていく。また、比較のためのコントロール群の撮影も進めていく。発注している座位と半座位の椅子を導入し、2つの体位での嚥下機能の違いを明らかにする。 排尿機能については、前立腺肥大、重症筋無力症、脊髄損傷など様々な排尿障害の患者の撮影を行い、治療方針の決定への重要な所見を明らかにしていく。 歩行機能については、立位用の筋肉解析ソフトの初期版を作成したが、立位CTの症例数が蓄積するにつれて学習データを増やしていき、この人工知能解析ソフトの精度を向上させていく。また、姿勢については、基準のための正常コントロール群を増やし、正常基準の確立を目ざす。更に、変形性膝関節症などの患者との基準線の違いも明らかにする。 課題はコロナ禍においてどのくらいの症例を施行できるかである。受診控えや病院の制限が緩和されていくことを望む。
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