研究実績の概要 |
本研究計画では、ヒトiPS細胞を分化させ、腎臓・尿管・膀胱が一体となった尿路系の完全構築を目指す。そのために以下の2つの研究目標を遂行する。 目標1:申請者が既に作成に成功している腎臓前駆細胞に加え、新たに尿管上皮、膀胱上皮、膀胱周辺間葉の前駆細胞をヒトiPS細胞から分化誘導する系を確立する。 目標2:目標1で作成した4種の前駆細胞群を三次元的に組み合わせ、in vitroで尿路系の原基を自己組織化させる。
今年度は主に目標1に関しての研究を遂行した。目標1に関して:膀胱上皮は総排泄腔という、後腸の最尾部の腹側に位置する上皮組織から発生する。従って、膀胱上皮を誘導するためには、エピブラストに近い性質を持つヒトiPS細胞を胚体内胚葉に分化させると同時に、腸管の後方化と腹側化を進行させる必要がある。今年度は、この内胚葉化、腸管化、後方化、腹側化の誘導条件を確定し、総排泄腔上皮細胞の作製に成功した。具体的には、ヒトiPS細胞をアクチビンにより胚体内胚葉に分化させた後に、後方化因子FGF4/WNTにより後腸化し、腹側化因子により総排泄腔の上皮(P63陽性、FOXA2陽性)を誘導した。さらに、膀胱上皮周辺の中胚葉系間葉細胞の誘導に関しては、ヒトiPS細胞から膀胱周辺間葉細胞(GLI1, PTCH1, BMP4, BMP7, RALDH2陽性)の誘導を行った。
|