研究実績の概要 |
本研究計画では、ヒトiPS細胞を分化させ、腎臓・尿管・膀胱が一体となった尿路系の完全構築を目指す。そのために以下の2つの研究目標を遂行する。 目標1:申請者が既に作成に成功している腎臓前駆細胞に加え、新たに尿管上皮、膀胱上皮、膀胱周辺間葉の前駆細胞をヒトiPS細胞から分化誘導する系を確立する。 目標2:目標1で作成した4種の前駆細胞群を三次元的に組み合わせ、in vitroで尿路系の原基を自己組織化させる。
膀胱上皮は総排泄腔という、後腸の最尾部の腹側に位置する上皮組織から発生する。従って、膀胱上皮を誘導するためには、エピブラストに近い性質を持つヒトiPS細胞を胚体内胚葉に分化させると同時に、腸管の後方化と腹側化を進行させる 必要がある。 2021年度は、目標1である内胚葉化、腸管化、後方化、腹側化の誘導条件を確定し、総排泄腔上皮細胞の作製に成功した。さらに、 膀胱上皮周辺の中胚葉系間葉細胞の誘導に関しては、ヒトiPS細胞から膀胱周辺間葉細胞(GLI1, PTCH1, BMP4, BMP7, RALDH2陽性)の誘導を行った。2022年度は、 総排泄腔上皮細胞と膀胱周辺間葉細胞を相互作用させることで、膀胱オルガノイドを作製した。具体的には、回転培養法やマトリジェル内部での三次元培養法により、3層上皮構造(UPK陽性の表層、P63陽性の中間層、CK5陽性の基底層)が形成されたことを評価した。2023年度は、目標1の研究の完了を受け、目標2の研究を遂行した。具体的には、目標1で作成した尿管のオルガノイド、そして膀胱上皮のオルガノイドを共培養した。その結果、尿管のオルガノイドから膀胱のオルガノイドへの上皮組織の伸長を再現することに成功した。
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