研究課題
がんの再発は、がん治療に耐性を示すがん幹細胞が生き残ることによって起きる。癌幹細胞は癌組織中の低酸素や低栄養、および傍血管部位などの特殊な微小環境(癌幹細胞ニッチ)で生成・生存すると考えられているが、その詳細な機序は未だ不明な点が多い。研究代表者らは、近年、高強度ダブルネットワークゲル上にがん細胞を播種すると、24時間以内に迅速にがん幹細胞が誘導されるリプログラミング現象を見出した(Nat. Biomed. Eng., 2021)。当該技術を基盤として、本研究ではがん組織におけるがん幹細胞の誕生・生存機序の解明を目指す。令和5年度は、極めて予後不良の膠芽腫において、がん細胞ニッチが幹細胞性誘導に与える影響について検討した。ハイドロゲル上でヒト膠芽腫細胞と神経の支持細胞であるアストロサイトを共培養し、両者の直接接触ならびにアストロサイト由来の分泌蛋白が膠芽腫の幹細胞性誘導に与える影響について検討した。共培養ではアストロサイトに接着して膠芽腫細胞が優位に増殖する形態が認められ、検討した4種類のハイドロゲルのうち3種類において幹細胞マーカーのさらなる亢進が認められた。一方、アストロサイト由来の分泌蛋白の影響については、1種類のゲル上で培養したアストロサイトの分泌蛋白が幹細胞性を増加させた。この結果は、脳に存在する支持細胞が至適な環境下で腫瘍の幹細胞性を誘導、およびがん幹細胞の生存に有利に機能していることを示唆する。さらに、ハイドロゲル上で誘導されたがん幹細胞に対して効果がある薬剤をドラッグスクリーニングした。ヒト膠芽腫細胞を最も幹細胞性の誘導率が高かったハイドロゲル上で培養後に薬剤処理し細胞生存率を検討したところ、複数の膠芽腫細胞株に対して共通して効果が認められた薬剤を複数同定した。これらの薬剤は、高悪性度の膠芽腫に対して生命予後を改善できる可能性があると期待される。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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