研究実績の概要 |
本研究の目的は、がん微小環境中のがんモデルの代謝計測法の開発である。がん微小環境は、がんの機能制御因子として重要な役割を担っており、がん微小環境が、がん細胞の代謝活動に与える影響を明らかにできれば、がんの機序解明に与える貢献は大きい。昨年度に代表者らは、マイクロ流体デバイスを用いた大腸がんオルガノイドと血管網を接続し、代謝計測を実施するプラットフォームを開発、バイオセンサの国際誌に報告を行った(Y. Nashimoto, et al., Biosensors and Bioelectronics, 219, 114808 (2023))。今年度は、適応可能ながん種をさらに拡張すべく、口腔がんでの応用、またがん微小環境で血管網側に起こる間葉転移(内皮間葉転移: EndoMT)の検討を行った。 口腔がんの細胞株としては、扁平上皮がん(SAS)を用いた。血管網との共培養により、血管とSASは反発しあう傾向を見せ、血管網との接続には至らなかった。これまでの知見で、同一組織由来のがんでも、株によっては同様の傾向があった。一方で、EndoMTに関しては、毛細血管網をマイクロ流体デバイス中で構築し、がん微小環境中で多量に分泌されている、TGF-βの刺激を血管網に加え、応答を評価した。毛細血管網の経時的な形態変化の観察や、遺伝子発現、タンパク質発現の評価から、EndoMTマーカーのいくつかをマイクロ流体デバイス中の血管網を用いて観察するに至った。 以上、最終年度は、開発したがん代謝計測システムのがん種の拡張と、がん周囲の細胞の機能変化を評価し、一定の成果を残すことができた(土屋ら、Cheminas 46, Cheminas 48他)。
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