研究実績の概要 |
【研究項目1】Short-TE STEAM撮像法により代謝物信号の減衰を抑えて、GABAを含めて各部位5分以内の短時間計測が可能となったが、TE時間の短縮により広い化学シフトを有する巨大分子が定量結果に与える影響が大きくなった。そのため、短時間の反転パルスにより代謝物を抑えて巨大分子のみを計測して解析モデルに組み込めるようにした(Okada T, et al. 2023)。さらに計測可能部位を前部帯状回や背外側前頭前野を含めた多部位計測へと拡張して、30分以内で撮像可能とした。 これを基に、脳神経活動により生じるグルタミン酸の経時変化を捉えるダイナミックMRSとして、一次感覚運動野において指運動時のグルタミン酸増加を示した(Okada T, et al. 2022)。加えて従来法では計測が困難であったGlucoseに関して、通常の計測範囲から外れるが、独立したピークが観察可能なH1-α-Glucoseを対象とした定量計測手法を提唱した(Kuribayashi H, ..., Okada T. 2024)。 【研究項目2】精神神経疾患・神経変性疾患患者で生じる脳内化学物質の変化を検出する研究として、難病である神経線維腫症Ⅰ型を対象に、開発したMRSを用いた共同研究を実施した。同疾患ではneurofibrominをコードする遺伝子異常により、細胞増殖が適切に抑えられず、神経線維腫や視神経膠腫をはじめとする多彩な症候を呈する。健常対照群と比較して一次視覚野でGlutamate・GABAともにより高値を示したが、特に後者は有意であった。神経線維腫症Ⅰ型患者に於いてベースに神経活動の亢進があり、それを抑制するようにGABAが増加している可能性を含めて論文化中である。 これ以外にも、精神神経疾患を対象とした共同研究を並行して進めている。
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