研究課題/領域番号 |
21H03807
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 陽介 京都大学, 工学研究科, 講師 (20589189)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 光ポンピング磁気センサ / 生体磁気計測 / MRI / マルチモーダルシステム / SERF / スカラー型OPM |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,脳や心臓などの形態情報および機能情報の取得に向け,磁気共鳴画像( MRI )と機能的 MRI ( fMRI ),脳磁図計測( MEG ),心磁図計測( MCG )とが計測可能な超高感度マルチモダリティ生体磁気計測システムの実現を目指し,光ポンピング磁気センサ( OPM )の超高感度化および広帯域化,広ダイナミックレンジ化を行うことである. 2022年度は,ポンププローブ型OPMのポンプ光を変調することにより,プローブ光伝播方向の多点同時計測を行うことを検討した.変調方式として,正弦波によるAM変調や偏光変調に加えて,M系列を用いた偏光変調についても検討をした.その結果,正弦波による変調では,センサの周波数特性の影響により,高周波帯域を用いたチャネルにおいて計測感度の低下がみられたのに対して,M系列を用いた変調では各チャネルを周波数領域で分離するわけではないので,周波数特性の影響を考慮せずにチャネル数を増やすことが可能であることが分かった.ただ,M系列を用いた変調の場合は,スピン偏極の生成と緩和速度によりチャネル数が制限されるため,ハイブリッドセルでは最適なアルカリ金属原子の密度についてさらなる検討が必要である. MRIに向けた広帯域化の検討として,勾配磁場による計測帯域の拡大を行った.その結果,広帯域化は可能であったが,T2*緩和の影響により計測感度との両立が難しく,十分な計測感度は得られなかった.そのため,前年度からの結果を踏まえて,スカラー型OPMによる検討を行った.スカラー型OPMでは,地磁気レベルのバイアス磁場に対してラーモア周波数が数百kHzとなるため,計測帯域は100 kHzオーダとなり,差動計測を行うことによりfTレベルの計測感度に到達することが分かった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載したとおり,多点計測については正弦波変調に加えて,新たにM系列変調を検討することで多点計測への筋道を示すことができた.また,計測周波数帯域の広帯域化についてもスカラー型OPMを導入することで,従来のOPMを大きく超える計測帯域を実現可能であることがわかった.これらより2022年度の目標としていた,多点計測と広帯域化について実現可能性を示せたことから,順調に進展していると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究については,M系列変調によるチャネル数の増加について,緩和時間との相関検討していく.また,ポンププローブ型のSERF OPMはローレンツ関数型の周波数応答を有しているが,実用する際にはなるべくフラットな周波数特性が望ましいため,位相補償回路や制御回路を組み込むことにより,周波数特性の改善を目指しつつ,OPMが不得手とするダイナミックレンジの改善にも取り組む. さらに,ソフトウェア的な雑音低減方法にも着手し,多点計測で得られた信号に空間フィルタ法などを適用し,機械学習によりリアルタイムにノイズを低減することを検討する. 最後に,本研究の総括として,生体磁気計測およびMRIのマルチモーダルシステムの実現可能性について検討する.
|