研究課題
本課題の目的「生体臓器に匹敵する機能・形態を有する三次元バイオ人工心臓の創出に向けた基盤技術の開発」に沿い、当該期間中に下記をおこなった:#1. ラット心の脱細胞化マトリックスにヒトiPS細胞由来心筋細胞を播種し、再細胞化三次元心筋組織を構築した。再細胞化組織の自己拍動を実体顕微鏡を用いて観察するとともに、多電極アレイにより細胞外電位を記録し、カリウムチャネルブロッカー(E-4031)添加時の効果を調べたところ、Field Potential Duration の延長が観察された。#2. 組織透明化技術と心臓の三次元イメージングにより、心臓に分布する交感神経の可視化技術を確立した。この手法により、マウス健常心およびカテコラミン負荷心臓における交感神経の3次元分布の可視化が可能となり、3次元組織構築時のgeometirical patterning などの評価が可能となった(論文投稿準備中)。#3. ラット交感神経細胞の存在下で、ヒトiPS細胞由来心筋細胞の自己組織化と成熟化が促進される現象を in vitro 実験系で確認した。#4. ヒトiPS細胞由来心筋細胞におけるストレスファイバー(アクチン)と細胞増殖・遊走に関連するYAPシグナルの関係を調べ、原著論文として学術誌に報告した(Yasutake et al. Sci Rep, 2021)。#5.ヒトiPS細胞由来心筋細胞(心房筋・心室筋)の機能特性評価技術を確立し、三次元心筋の評価を行うための基盤技術開発を行い、学術誌に報告した(Li J, Lee JK et al. Methods in Molecular Biology. 2021; Honda et al. Front Pharmacol 2021; Yuasa et al. Front Cell Dev Biol 2022).
2: おおむね順調に進展している
ヒトiPS心筋の2次元培養系、3次元イメージングおよび3次元培養系の脱細胞化技術は順調に進展している。一方、3次元心筋の再細胞化においては、長時間培養時に汚染が生じることがあり、脱細胞化、再細胞化の工程における原因探索を行っていたため、やや遅れが生じた。
2022年度においては、2021年度に取り組んだ3次元心筋組織の長期培養時の汚染対策(脱細胞化工程における回路の無菌化徹底と抗生物質の適正使用)を徹底して、課題を遂行する。さらに2021年度に確立した3次元イメージング手法を応用し、3次元再細胞化心筋組織の形態・機能解析技術の開発を進展させる。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Frontiers in Cell and Developmental Biology
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