研究実績の概要 |
本研究課題の目的は「臓器間クロストークにより、生体臓器に匹敵する生理機能特性を有する三次元バイオ人工心臓および心臓オルガノイドを創出すること」である。この目標を達成するために、「交感神経細胞との共培養がiPS心筋の自己組織化・成熟化を促進する効果」のメカニズムを解明するとともに、三次元心筋組織構築を行い、心臓再生治療および創薬に利用可能な基盤技術の開発をめざした。 2023年度は、ヒトiPS細胞由来心筋細胞と交感細胞との共培養実験により得られたこれまでの成果をもとに、培養心筋組織を用いた創薬および疾患モデルへの応用可能な三次元組織の構築研究を行った。 (1)ヒトiPS細胞由来心筋細胞と交感神経細胞の共培養での遺伝子発現パターンおよび臓器形成から成熟段階における哺乳類の心臓の細胞外マトリックスに関連する遺伝子発現に関する public databaseを用いた in silico 解析を行い、自己組織化に関連する候補物質を絞り込んだ。さらに、脱細胞化処理を行った新生仔ラットの細胞外マトリックスに、細胞外基質蛋白を含有するバイオインクとともにヒトiPS細胞由来心筋細胞を播種し、三次元心筋組織構築法の開発に取り組んだ。本項目においては、培養工程での汚染が持続したため、その対策を施し、実験を継続している。 (2) 創薬および疾患モデルへの応用可能な心筋組織プラットフォームを構築するため、doxorubicin (50 nM-5,000 nM)をヒトiPS細胞由来心筋細胞に添加し、in vitro 心筋老化モデルの作成を試みた。本薬剤添加により、SPiDER-beta-Gal 陽性ヒトiPS細胞由来心筋細胞が観察された。一方、心筋老化への関与が報告されている線維芽細胞の影響を調べるため、ヒト心臓由来線維芽細胞へのdoxorubicin添加モデルを作成し、心筋細胞ー非心筋細胞間クロストークが病態に与える影響を調べるためのプラットフォーム構築を行った。
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