MLL-AF9急性骨髄性白血病細胞を、骨髄内の血管、血管周囲間質細胞を可視化できる遺伝子改変マウスに輸注して作製したニッチ可視化白血病モデルマウスの骨髄内神経イメージング解析を行い、急性白血病マウスでの骨髄内では、骨髄ニッチ細胞の著明な減少とともに骨髄内交感神経線維、感覚神経線維がともに著明に障害を受けることが明らかとなった。さらに、骨髄上清中に放出される神経メディエーター解析では、白血病マウスでは感覚神経メディエーターであるCGRP濃度が著明に低下しており、さらに、骨髄の中に分布する感覚神経の細胞体が存在する脊髄後根神経節におけるCalca遺伝子(CGRPをコードする遺伝子)の発現を解析したところ、白血病マウスではCalca遺伝子の発現をみとめた。これらの結果を元に、カプサイシンによる感覚神経除神経を施行したマウスに白血病細胞を接種してその後の白血病細胞の進展を比較したところ、除神経群は対照群と比較して骨髄中、脾臓中の白血病幹細胞分画が少なかったが、白血病の進展速度、マウスの生存に大きな変化をみとめなかった。次に、我々は神経シグナルによる白血病制御機構の新たな治療標的となりうる経路を探索するため、骨髄ニッチ細胞における末梢神経シグナル受容体の発現スクリーニングを行い、骨髄ニッチ細胞が高発現する神経メディエーター受容体Xを見出した。ニッチ細胞での受容体Xの発現は脳組織や脊髄組織と比較しても顕著に高いことをとらえており、現在、白血病病態における受容体Xを介したシグナルの役割解析に着手している。
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