研究課題/領域番号 |
21H03813
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
吉冨 徹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 高分子・バイオ材料研究センター, 主幹研究員 (20585799)
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研究分担者 |
陳 国平 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (50357505)
松井 裕史 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70272200)
川添 直輝 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主席研究員 (90314848)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光線力学療法 / 組織接着性 / ポルフィリン / 光増感剤 / ポリカチオン |
研究実績の概要 |
4級アンモニウム塩を有するポリカチオンに光増感剤ポルフィリンが結合した組織接着性ポルフィリンを用いた局所投与型光線力学療法を開発している。組織接着性ポルフィリンを用いて光線力学療法に展開しているが、細胞実験において、組織接着性ポルフィリンがエンドソームに蓄積したところで、635nmの赤色レーザーを照射すると、アポトーシスを誘導することを見出した。それと同時に、光照射と共に細胞が膨潤したのち破裂し、多数の小胞体を産生することを見出した。また担癌マウスを作製し、光増感剤を腫瘍と皮膚の間に投与し、635nmの光を照射すると、低分子の光増感剤では、わずかに抗腫瘍効果が確認されたのに対し、組織接着性ポルフィリンでは、高い抗腫瘍効果を示した。さらに、従来の光線力学療法では、投与した光増感剤が皮膚や目に長期間残存し、治療後の約一か月間遮光管理をしないと、光線過敏症を発症する。そこで、過剰量の低分子光増感剤を腹腔内投与し、その後、背中の皮膚にUV光を照射すると、低分子光増感剤は、急速に全身に広がり、皮膚にも到達するために、照射領域において炎症が生じることを確認した。一方、組織接着性ポルフィリンは、高分子光増感剤であるため、低分子光増感剤に比べて全身に拡散せず、UV光を照射しても、全く光線過敏症を引き起こさなかった。この結果から、組織接着性ポルフィリンを用いた局所投与型光線力学療法は、従来問題となっていた光線過敏症を引き起こさずに、高い効果を発揮する新しい光増感剤としてのポテンシャルを有していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験により、組織接着性ポルフィリンが高い抗腫瘍効果を有しているだけでなく、光線過敏症を引き起こさないことが明らかとなったため。
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今後の研究の推進方策 |
細胞膜の破裂、及び小胞体産生機構について明らかにする。
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