研究課題/領域番号 |
21H03818
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
川上 茂 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (20322307)
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研究分担者 |
水上 修作 長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (00508971)
向井 英史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (60570885)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ドラッグデリバリーシステム / 標的指向化 / 多色深部イメージング / ワクチン / mRNA |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、安全性と有効性を追求したmRNA/脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle: LNP)の樹状細胞への選択的送達を基盤とする革新的T細胞誘導型ワクチン医薬の創成を行うことである。mRNA/LNPは筋肉内投与後、全身循環血でPEG脂質が遊離、内因性ApoEタンパク質と結合し、肝臓実質細胞のLDLレセプターに認識し取り込まれ、肝臓で高い発現を示すことが知られている。このような全身での発現は、抗原タンパク質次第では予期せぬ副作用を引き起こす可能性がある。そこで、まず、投与局所で発現を示すものの、全身に移行後は製剤自体が不安定となり、肝臓では発現がしなくなる製剤設計を行った。その結果、筋肉組織での発現は示すものの、肝臓での発現が大きく低下する脂質組成の要因を明らかにすることに成功した。また、今後、mRNA/LNPを取り扱っていく上で重要であるが情報が少ない、保存条件や取扱条件が及ぼすナノ粒子の物理化学的性質と発現との関連性を明らかにした。一方、mRNAワクチン効果を評価するために、マウス体内での免疫学的な評価を考慮してオボアルブミン(OVA)のコドン最適化を行いOVAをコードしたmRNAの合成を行った。また、樹状細胞の機能をデザインするデザイナー樹状細胞樹立に向けて、樹状細胞への遺伝子導入条件の探索を行い、エレクトロポレーション法ならびにエタノール希釈法で作成したpDNA/LNP, mRNA/LNPによる生存率と導入効率の比較を行った。その結果、mRNA/LNPが、樹状細胞における生存率ならびに導入効率に対して最も優れた方法であることが明らかとなった。今後、mRNA/LNPを用いてデザイナー樹状細胞を構築していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋肉組織で選択的に発現するシステムの構築においてmRNAをコードしたタンパク質が発現している細胞の同定が遅れた。一方、デザイナー樹状細胞においては、各種導入法の比較が終わり、mRNA/LNPが生存率と導入率の両面において当初想定していた以上に優れている方法であることを明らかにすることができた。また、当初は想定していなかったが、今後、mRNA/LNPを取り扱っていく上で、保存安定性に関する情報が少ないため、本情報を得ることができ、mRNA/LNPの取り扱いの面で結果に対するバイアスを避けることができるようになった。以上を総合的に考え、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
順調に進んでいる。このまま研究計画通りに進め、安全性と導入効率の両面において、樹状細胞に対して優れるmRNA/LNPの開発を進めていきたい。
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備考 |
https://researchmap.jp/skawakam
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