研究課題/領域番号 |
21H03829
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
鈴木 賢一 基礎生物学研究所, 新規モデル生物開発センター, 特任准教授 (90363043)
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研究分担者 |
遠藤 哲也 愛知学院大学, 教養部, 准教授 (90399816)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 器官再生 / イモリ / ECM / マトリソーム / トランスオミックス |
研究実績の概要 |
有尾両生類は脊椎動物の中でも卓越した器官再生能力を有する。レンズ、四肢、心臓、さらには脳に至るまで、形態的かつ機能的に再生させることが可能であるため、その高度な能力は古くから生物学において注目されてきた。有尾両生類の四肢再生時には、筋菅・軟骨・皮膚繊維芽細胞が脱分化し、未分化間葉系幹細胞の特徴を持った再生芽細胞の塊である再生芽が形成される。その際、神経や免疫細胞の影響下で創傷治癒から器官再生へと段階的に変化していく過程が知られており、このターニングポイ ントでの分子機構は再生研究における最重要課題である。脱分化を促進し、再生芽細胞の増殖を支え、様々な組織由来の細胞を呼び込んで器官再生を完遂させる再生特有の細胞外環境を解明すれば、組織工学や再生医療を革新的発展に導く知見が得られると期待できる。しかしながら、未だその分子機構や実体は深い謎に包まれている。この再生能力の原理を解明すれば、組織工学や再生医学に革新をもたらす重要なヒントが得られるはずである。 再生中の器官には、細胞の脱分化や幹細胞の増殖を保証するための「細胞外マトリックス」や「分泌性増殖因子」で構成された特殊なマトリソームが存在していると考えられている。本研究では、イモリの器官再生中のマトリソームをオミックス解析で徹底的に同定し、 再生特有なマトリソーム因子の器官再生における役割をゲノム編集技術により個体レベルで理解する。さらに、再生マトリソームが高等生物の幹細胞増殖や創傷治癒に及ぼす効果を評価する。以上の結果から、イモリが持つ高度な器官再生能力の原理を読み解き、生体材料工学における画期的な材料開発の手がかりとなる知見を供することを最終目的とする。 令和三年度はイモリ四肢再生芽のトランスオミクス解析を中心に、再生芽における重要なECM遺伝子群のノックアウト解析、および機能解析に必要なトランスジェニック技術の開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ある程度当初の計画通りに進んでいる上、本研究課題を深化させるための新しい技術の導入や整備も積極的に行うことができたため、(2)に該当すると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
イベリアトゲイモリ成体の四肢は、切断されてもその複雑な構造や機能を2ヶ月ほどで完全に再生する。この再生芽を構成する「細胞外マトリックス」と結合している「分泌性因子」群の集合体であるマトリソームを網羅的かつ徹底的に同定するためマトリソームのトランスオミクス解析を引き続き行う。先進ゲノム支援の協力によりイベリアトゲイモリゲノム解析が飛躍的に進み、高度なオミックス解析が可能となった。注目すべきECMや分泌性因子に関しても引き続きイモリ個体を用いた機能解析を引き続き行う計画である。以上、本研究で掲げている三つの達成項目である、「同定」と「理解」に関してはさらなる深化した知見が得られると期待している。これらの知見と技術を以って、最終ステップへと繋げたい。
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