研究課題/領域番号 |
21H03833
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
戸井田 力 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (40611554)
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研究分担者 |
清水 勇気 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (30778064)
姜 貞勲 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (50423512)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナノメディシン / マクロファージ / 非アルコール性脂肪性肝炎 / 肝線維化 / 慢性炎症 |
研究実績の概要 |
サイズの異なるリポソーム(70~100 nmおよび350~400 nm)を合成し、その表面にタンパク質を修飾する手法を確立した。修復性マクロファージを誘導するタンパク質(以下、X)を修飾したリポソーム(以下、ナノメディシン)を細胞実験したところ、小さいナノメディシンは炎症性マクロファージの産生する炎症性サイトカインをより強く抑制したことから、高い抗炎症作用を有することが明らかとなった。また、どちらのサイズについても、マクロファージ以外の細胞よりも、マクロファージに対して高い親和性を示した。特に、炎症性マクロファージに対して、高い親和性を持つことが明らかとなった。しかし、活性型マクロファージを誘導するサイトカインの刺激時間により、活性化が異なることが予測されるため、これを考慮したより詳細な実験が必要であろう。NASHモデルマウスに対する治療実験において、Xあるいはリポソームの単独投与では、脂肪蓄積、線維化、炎症細胞浸潤の減弱は認められなかった。Xとリポソームの会合体であるナノメディシンは、線維化と炎症細胞浸潤を著しく抑制した。ナノメディシンを蛍光修飾し、マクロファージ指向性を評価したところ、NASH肝臓に浸潤したほぼすべてのマクロファージで取込みが確認された。一方、Xのマクロファージ指向性は極めて低かった。以上の結果は、ナノメディシン化によりXのマクロファージ指向性を向上することで、NASHの治療効果を増強できることを示している。また、本ナノメディシンは、その他の線維症の抑制にも有効であることが明らかとなり、その成果を論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、ナノメディシンのNASH治療効果を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
ナノメディシンの作用機序を解明するため、マクロファージの表現型、活性化肝星細胞の浸潤、NASHに関与する分子群の評価を行う。一部の実験はすでに開始している。
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