研究課題/領域番号 |
21H03843
|
研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
根岸 洋一 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (50286978)
|
研究分担者 |
吉川 大和 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (20274227)
高橋 葉子 (遠藤葉子) 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (30453806)
濱野 展人 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (80708397)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ナノバブル / 超音波 / DDS / 心不全 / 核酸・遺伝子 |
研究実績の概要 |
1)ナノバブルの調製:中性脂質および負電性脂質の含有量を変化させたナノバブルを作製し、これらをマウスへの全身投与後に心エコーを指標にナノバブルの生体内安定性を評価した。その結果、中性脂質含有ナノバブルと比較して、負電性脂質含有ナノバブルにおいて高い安定性が示された。また、調製ナノバブルを高速撹拌し、ナノバブルの個数を計測したところ、高速撹拌することで、粒子数が顕著に増加することが明らかとなった。 2)筋選択的ペプチド修飾ナノバブル作製:蛍光標識した筋選択的ペプチド修飾リポソームに超音波造影ガスを封入したナノバブルを作製し、筋細胞との相互作用性を蛍光顕微鏡にて評価した。その結果、未修飾あるいはスクランブルペプチド修飾ナノバブルと比較して、筋選択的ペプチド修飾ナノバブルにおいて顕著な細胞相互作用性を示した。 3)遺伝子搭載ナノバブルの作製と導入実験:負電荷脂質含有ナノバブルにカチオン性ポリマーを2種類、表面コートしたところ、蛍光修飾プラスミドDNA(pDNA)の搭載が可能となることがFACS解析により示された。さらにルシフェラーゼ遺伝子をコードしたpDNAをナノバブルに搭載し、これをマウスへの静脈内投与後に直ちに体外からの心臓への経皮的治療用超音波照射を行った。その結果、顕著な超音波照射依存的な遺伝子発現が認められた。しかしながら、表面コーティングによる有意性は十分とは言えず、ナノバブルの調製と遺伝子導入条件の最適化が必要と考えられた。 4)心不全モデルマウスの作製:薬剤誘発性慢性心不全モデルマウスの作製を行ったところ、薬剤投与量依存的に、顕著な心臓重量の増大を認め、慢性心不全を確立することができた。本モデルマウスの利用で、次年度以降のナノバブルによる超音波イメージングならびに超音波照射併用による核酸・遺伝子デリバリーシステムの構築が可能となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究遂行により、生体内で安定性に優れた負電性脂質を含有させたナノバブルへのカチオン性ポリマーを表面コーティングすることで、プラスミドDNAの効率的なナノバブルへの搭載が可能となることを明らかとした。また、筋選択的ペプチドを修飾したナノバブルを調製し、in vitro系にて筋細胞との相互作用性も示した。さらにルシフェラーゼ発現プラスミドDNAを用いてin vivoにおける心臓へのナノバブルと超音波併用遺伝子デリバリーが可能となったことから、心筋ターゲティングナノバブルを利用することで効率的な超音波イメージングと核酸・遺伝子デリバリーシステムの構築につながるものと期待できる。薬剤誘発性慢性心不全モデルマウスの作製検討では、心肥大が認められたことから、心不全モデル実験が可能な状況となった。今後、本モデルを利用することで、ナノバブルによる超音波イメージングならびに超音波照射併用による核酸・遺伝子デリバリーシステムの構築が可能となるものと考えられる。 以上の理由から本研究はおおむね順調に進展していると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
1)遺伝子搭載ナノバブルの最適化: 昨年度の結果より、数種のカチオン性ポリマー修飾ナノバブルへのプラスミドDNA(pDNA)の搭載と遺伝子導入効果が示されたが、さらなる遺伝子導入活性を増強するために、ナノバブルへのポリマー修飾量やpDNA搭載量を工夫し、FACS等で評価し最適化を図る。他のカチオン性分子等を利用して同様に検討する。レポーター遺伝子発現pDNAを用いて、 pDNA搭載ナノバブルを調製する。これを正常マウスに静脈内投与し、直ちに治療用超音波(強度等変動)を照射することで、心筋への遺伝子導入条件の最適化を図る。 2)心不全モデルマウスにおける筋選択的ペプチド修飾リポソーム・ナノバブルの集積性: 昨年度に確立した心不全モデルマウスに、蛍光標識した筋選択的ペプチド(A2G80)修飾リポソームあるいは、超音波造影ガスを封入したA2G80修飾ナノバブルを投与し、それらの集積性を蛍光顕微鏡あるいは超音波診断イメージングにより評価する。他の候補リガンドのナノバブルへの表面修飾についても比較検討する。 3)心不全モデルマウスへの遺伝子デリバリー: pDNA搭載ナノバブルを心不全モデルマウスに静脈内投与し、直ちに治療用超音波(強度等変動)を照射することで、レポーター遺伝子発現活性を指標に心筋への遺伝子導入効果を検証する。2)の計画においてA2G80修飾ナノバブルの集積性が認められた場合には、pDNAを搭載したA2G80修飾ナノバブルの調製法を確立し、同様の遺伝子導入実験を実施する。高い導入効率が得られた場合には、レポーター遺伝子導入後の組織切片を作製し、蛍光顕微鏡にて導入エリアを評価する。1-3)結果が良好な場合には、pDNAのみならず、他の核酸分子やmRNAのナノバブルへの搭載を実施し、同様に治療用超音波照射併用による種々のマウスへの導入を試みる。
|