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2022 年度 実績報告書

心不全に特化した超音波応答性ナノバブルの開発と疾患治療システムの構築

研究課題

研究課題/領域番号 21H03843
研究機関東京薬科大学

研究代表者

根岸 洋一  東京薬科大学, 薬学部, 教授 (50286978)

研究分担者 吉川 大和  東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (20274227)
高橋 葉子 (遠藤葉子)  東京薬科大学, 薬学部, 講師 (30453806)
濱野 展人  東京薬科大学, 薬学部, 講師 (80708397)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードナノバブル / 超音波 / DDS / 心不全 / 核酸・遺伝子
研究実績の概要

2021年度の結果より、カチオン性ポリマー修飾ナノバブルへのプラスミドDNA(pDNA)の搭載と遺伝子導入効果が示された。しかしながら、さらなる遺伝子導入活性を増強するために、ナノバブルへのカチオン性ポリマー修飾量を調整し、pDNA搭載量向上を図った。調製したアニオン性脂質含有ナノバブルに、カチオン性ポリマー添加量を変え、その表面電位を測定した。結果、カチオン性ポリマーを一定以上加え、数分相互作用させることで約+10mV~20mVを示すカチオン性ナノバブルの調製が可能であった。さらに蛍光ラベル化したpDNAの添加量を変化させ、ゼーターサイザーおよびFACSにてナノバブルの表面電位およびpDNA搭載量を調べたところ、pDNA添加量増加に伴って、カチオン性からアニオン性へと表面電位がシフトした。ある一定以上の添加量では電位は一定となったことから、最大搭載量を明らかにできた。カチオン性ポリマー修飾によるナノバブルの粒子径および粒子個数の変化はほとんど認められないことも確認した。
次にマウス心臓への超音波遺伝子導入を実施した。ルシフェラーゼをコードしたpDNAをカチオン性ナノバブルに表面コートし、尾静脈内投与後に、心臓への治療用超音波を照射し、24時間後のルシフェラーゼ活性を指標に導入効率を評価した。低い音圧では十分な導入活性を認めなかったのに対し、高い音圧強度では、非超音波照射群と比較して、5~10倍以上の発現上昇を示した。さらに作製した心不全モデルマウスに対しても同様のpDNA導入実験を行ったところ、その超音波併用による発現上昇傾向を示した。以上の結果より、ナノバブルと治療用超音波を併用した心臓への遺伝子導入システムの有用性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

カチオン性ポリマー修飾ナノバブルへのpDNAの搭載条件と導入条件の最適化を行ったところ、pDNAの最大搭載量ならびにある程度、最適な治療用超音波照射条件を定めることができた。特に正常マウス心臓への導入実験によって、ナノバブルと治療用超音波を併用した心臓への遺伝子導入システムの有用性を示すことができた。今回、定めた導入条件を用いて、miRNAやmRNAなどへの適用も可能となるものと考えられる。心不全モデルへの導入結果では、遺伝子導入活性は軽微なものであった。この理由として今回、作製した心不全モデルマウスの心臓を摘出し、組織学的にコラーゲン沈着による線維化状態をマッソントリクローム染色にて調べたところ、線維化がかなり進んでいた。それゆえ導入効率が減弱あれたものと思われた。しかしながら、心不全モデル治療においては、周辺部の構成細胞に導入することで、病態の進行抑制も可能となることも期待できる。今後、周囲の環境を治療用核酸導入によって、線維化の抑制や血流改善に繋がると考えられ、次年度計画で明確にできるものと考えている。以上の理由から、本研究課題である核酸医薬を含有する超音波応答性ナノバブルの開発と心不全治療に向けたシステム構築は、おおむね順調に進展していると思われる。

今後の研究の推進方策

最終年度では、心不全治療候補核酸医薬を搭載したナノバブルによる治療戦略を進めるために、以下の検討を行う。
1)miRNA搭載ナノバブルの調製と心不全モデルへの適用
負電荷脂質含有ナノバブルにカチオン性ポリマーを表面コートした後に、蛍光ラベル化miRNAを搭載し、FACSにて解析することで搭載量の検討を行う。この際に適宜、表面電荷の比率を変動させて搭載量の最適化を行う。次に調製した蛍光ラベル化miRNA搭載ナノバブルを薬物誘発性心不全モデルマウスへと静脈内投与し、直ちに体外からの心臓への治療用超音波照射する。その後の照射心臓部位を摘出し、組織切片作製後、蛍光顕微鏡にて組織内分布を評価する。結果を踏まえ、適宜、治療用超音波強度を変動させる。さらに治療実験においては、心不全病態の改善が期待されるmiRNAを搭載し、本ナノバブル併用超音波導入を実施し、定量PCRなどの分子生物学的評価に加えて、組織学的評価により治療効果を判定する。
2)mRNA内封LNPとナノバブルの併用によるmRNAデリバリーの検討
正常マウスにmRNA内封LNPをナノバブルとともに投与し、治療用超音波照射する。照射強度や時間を変動させる。その後の心筋、骨格筋をはじめ全身におけるレポータータンパク質発現を指標に導入条件の最適化を図る。得られた条件を適用し、疾患モデルマウスへのRNA導入を試みる。上記に関して、リガンド修飾による増強効果についても検討を加える。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 筋ジストロフィー治療に向けた筋組織指向型mRNA封入脂質ナノ粒子の開発2023

    • 著者名/発表者名
      佐々木愛理、板谷祐紀、濱田圭祐、中島康介、三浦 剛、吉川大和、濱野展人、髙橋葉子、田中浩揮、秋田英万、野水基義、根岸洋一
    • 学会等名
      日本薬学会 第143年会
  • [学会発表] 筋ターゲティング型mRNA封入脂質ナノ粒子の開発2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木愛理、板谷祐紀、濱田圭祐、中島康介、三浦 剛、吉川大和、濱野展人、髙橋葉子、田中浩揮、秋田英万、野水基義、根岸洋一
    • 学会等名
      第66回日本薬学会 関東支部大会
  • [学会発表] ジストログリカン親和性ペプチドを介した筋ターゲティング型脂質ナノ粒子の開発2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木愛理、板谷祐紀、濱田圭祐、中島康介、三浦 剛、吉川大和、濱野展人、髙橋葉子、田中浩揮、秋田英万、野水基義、根岸洋一
    • 学会等名
      創剤フォーラム第27回若手研究会

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公開日: 2023-12-25  

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