研究課題/領域番号 |
21H03844
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
竹村 裕 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 教授 (60408713)
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研究分担者 |
高松 利寛 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 助教 (10734949)
長谷川 寛 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医員 (20793665)
竹下 修由 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 部長 (40645610)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 近赤外分光イメージング / 軟性内視鏡 / 硬性内視鏡 / 深部組織の可視化 |
研究実績の概要 |
消化管がんは軟性内視鏡下で視認でき,早期がんであれば粘膜にできたがんを剥離することで内科的に治療が可能である.しかし,進行がんは硬性内視鏡や切除デバイスを腹腔側から挿入し,がんを含んだ腸管領域を外科的に切除する.この時,がんの所在を視認する必要があるが,症例によっては正常組織の深部に隠れて視認できないため,適切なマージンを確保して切除することに難渋することがある. そこで本研究では,生体透過性の高い近赤外光を用いハイパースペクトラルイメージング技術を組合せた技術を確立すると共に,人体内での近赤外分光イメージングを実現する内視鏡を開発し,既存の内視鏡下では見ることのできない組織深部や腹腔側からがんを非侵襲かつ標識なしで可視化する技術を探求することを目的としている.
初年度では,デバイス開発をメインに取り組むこととし,基礎的データの収集を行うことで近赤外光を用いハイパースペクトラルイメージング技術を組合せた技術を確立すると共に,フィルターにより複数の光源を利用した近赤外分光イメージング内視鏡システムの基本要素を整えた.具体的には,摘出検体の胃癌と大腸癌を対象とし,病変の大きさ・深達度・局在で数カテゴリーに分けデータを集積するとともに,取得したNIR-HSIから,癌,非癌領域を機械学習で学習させ,識別可能かどうか検証した.さらに,臨床での利用を想定した,撮像に最適な光源や高速で画像取得するための光学系を選定し,開腹手術,硬性内視鏡下,近赤外分光対応細径ファイバー内視鏡(硬性・軟性内視鏡下で撮像できる近赤外分光イメージング内視鏡)の開発を行った.硬性鏡を利用したNIR-HSI内視鏡システムを世界に先駆けて開発した. しかしながらコロナ渦で,部品の物流がどこおり,イメージファイバーを利用した近赤外分光軟性内視鏡の開発は間に合わず,次年度以降の持ち越しとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた計画内容の摘出検体でのデータの収集,機械学習によるがん領域・非がん領域の識別,近赤外分光イメージングが可能な硬性内視鏡の開発などほぼ予定通りに進んでいる.しかし,外部に注文していた装置の納品がコロナ渦の影響で遅れ,開発を予定していたイメージファイバーを利用した近赤外分光軟性内視鏡は実現が間に合わなかったため.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,開発した硬性内視鏡システムを用いた大型動物実験に加え,コロナ渦の影響で開発が遅れているイメージファイバーを利用した軟性内視鏡システムの開発を行う.さらに, GIST検体やがん検体だけでなく,深部の血管,神経,胆管の可視化に取り組む.具体的には下記の項目を実施する.
・術中下で画像取得できるイメージングシステムの開発:臨床での利用を想定した,撮像に最適な光源や高速で画像取得するための光学系を選定し,開腹手術,硬性内視鏡下,近赤外分光対応細径ファイバー内視鏡(硬性・軟性内視鏡下で撮像できる近赤外分光イメージング内視鏡)の開発・改良を行う.硬性内視鏡に関しても,光学系の再検証,全体のシステムを動作させるソフトウェアの改良,サンプリングレートの向上,画像処理アルゴリズムの導入を実施する. ・臨床研究によるデータ収集:本研究では,申請者らがこれまでに行ってきた GIST検体,腫瘍の可視化の対象を広げ,深部の血管,神経,胆管などの NIR-HSIを取得し,可視化を検討する.さらに,大型動物を用いて,ライブイメージングでの有用性を検証する. ・可視化処理の高度化:取得した NIR-HSIから,癌,非癌領域,血管,神経,胆管などを機械学習で学習させ,識別可能かどうか検証する.さらに機械学習のアルゴリズムを改良することにより精度向上を試みる.さらに,部位や種類によってその波長特徴が異なると考えられるため,識別可能な症例に関して,どの波長で識別されているかを同様に解析する.
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