研究課題/領域番号 |
21H03849
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
坪子 侑佑 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (40809399)
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研究分担者 |
岩崎 清隆 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20339691)
挽地 裕 地方独立行政法人佐賀県医療センター好生館(ライフサイエンス研究所), ライフサイエンス研究所, 医師・医療系職員 (90380774)
八木 高伸 早稲田大学, 理工学術院, 主任研究員(研究院准教授) (00468852)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 断層画像流速計測法 / 冠動脈石灰化病変 / カッティングバルーン / 圧縮試験 / ひずみ分布計測 |
研究実績の概要 |
血管内治療における治療機器と病変血管との力学的相互作用の可視化を目的として、粒子画像流速計測法を応用した実験的ひずみ分布計測に向けた、透明な石灰化病変モデルの開発を進めた。 液体の熱硬化性透明ポリウレタンを採用し、流し込みにより任意の厚み・形状に成形可能な透明石灰化病変モデルの作製手法を考案した。次に、熱硬化反応の抑制による石灰化病変モデルへの脆性破壊特性の付与と圧縮強度の調整を目的として、硬化時の温度条件・環境の検討を行った。ポリウレタンを流し込んだモールドをオーブン加熱後、液体窒素での急速冷却工程、ディープフリーザでの超低温環境での反応安定工程を追加して各工程の条件を検討し、熱硬化反応の制御を試みた。 上記手順にて試作した石灰化病変モデルを用いて、万能試験機での圧縮試験を実施したところ、ヒト石灰化の文献値と同等な圧縮強度と脆性破壊特性を示した。さらに、冠動脈バルーンカテーテルでの拡張試験を実施したところ、臨床で一般に用いられるノンコンプライアントバルーンで破壊可能な石灰化病変の厚みの閾値として報告される0.4 mmに対して、実験では、病変モデルの厚み0.4 mmでは破壊でき、0.5 mmでは破壊できないという結果を達成できた。 あわせて、冠動脈モデルに生じる微小変形の計測のため、4台の高速度カメラで3次元的に病変モデルの変形を取得するための撮像系構築を試みた。光学設計を行い、斜位撮影における取得画像の収差を抑制するScheimpflug配置を満たす撮像系および実験系を構築し、直径3 mmのシリコーン製単純弾性管への内圧負荷時のひずみ分布計測の予備実験を行える環境が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度において透明石灰化病変モデルの試作と力学特性取得が進んだことに加えて、当該モデルを用いた冠動脈バルーンでの拡張試験において作製したモデルが脆性破壊特性を示し、臨床で一般に用いられるノンコンプライアントバルーンで破壊可能な石灰化病変の厚みの閾値を満たす病変モデルの破壊特性を達成できた。 あわせて、4台の高速度カメラでの撮像系を構築し、シリコーン製の単純弾性管を対象とした、内圧負荷時のひずみ分布計測の予備実験を行える環境が整った。 よって、当初の研究計画通りに研究の進捗が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度においては、上記成果を発展させ、粒子画像流速計測用の蛍光トレーサ粒子を材料に添加し、透明石灰化病変モデルの厚み、周方向・軸方向の分布を任意に調節可能かつ再現性高く大量生産可能な作製法の確立を進める。 作製した透明石灰化病変モデルに対して、冠動脈用ノンコンプライアントバルーンやブレード付きのカッティングバルーンでの拡張を施行し、その際の石灰化の変形・破壊の様子を、Scheimpflug配置を考慮した高速度動画撮像系において取得し、三次元ひずみ分布の算出から各種バルーン機器の冠動脈狭窄病変の拡張性能および、血管損傷の定量的リスク・ベネフィット評価を行う。 石灰化の分布形態と治療機器種との組み合わせや拡張条件を検討し、病変特徴ごとの安全かつ効果的な治療戦略の提案に向けた非臨床試験データの取得を開始する。
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