本研究の結果、飛鳥時代前半の冠は「1 広帯二山式冠との共通性が認められるもの」、「2 百済の銀花冠飾の影響を受けたもの」、「3 連珠円文がみられるもの」の3つの技術系譜に分類できると考えた。 2・3は、6世紀末~640年代頃にかけて百済から渡来した工人集団、1は5世紀後葉頃から日本列島で広帯二山式冠の製作を担ってきた工人集団によって製作されたものであろう。1と2・3の工人集団が互いに交流した様子はみられない。やがて2・3の工人集団は仏教荘厳具などの製作を担うこととなり、1の工人集団は消えていくことになるが、その過渡期の様相を確認することができた点は一定の成果であると考える。
|