本研究の目的は、報告者が担当する高校教科福祉において、学校外部の協力を得ながら、地域の福祉や介護の課題を発見・解決するSTEAM教育を行い、技術・工学を組み合わせた福祉・介護の実践力の育成を中心に、教育効果を検証するものである。また、本研究を実施することで、理系の科目を主として受講していない生徒がSTEAM教育を行うことの成果と課題についても明らかにしていく。 実施・検証方法としては 福祉を学ぶ報告者の所属校生徒(高校3年生4名 以下:生徒)が介護福祉施設にて、既存のコミュニケーションロボット(4台)を活用することで、コミュニケーションロボットの成果と課題を明らかにする活動を行い、活動後に生徒が記載するふりかえりの記述内容を中心に活動の効果および、理系の科目を主として受講していない生徒にとってのSTEAM教育のあり方について検証する。 本活動を通して生徒は「既存のコミュニケーションロボットができること・できないことの理解、介護福祉施設でのコミュニケーションロボットを活用する力(知識・技術)」、「介護福祉施設におけるコミュニケーションロボットの成果と課題を考察する機会(思考力・判断力・表現力等)」、「介護福祉施設におけるコミュニケーションロボットを活用するために何が必要かを検討する機会(学びに向かう力・人間性等)」等を得られるものであることがわかった。こうした成果は技術・工学を組み合わせた実践的な活動を行うこと以外では獲得することが難しいため、教科福祉におけるSTEAM教育特有の成果であるといえる。 またSTEAM教育のあり方としては、技術・工学に関する知識や技術、経験が十分でない場合、既存の物品を活用しその成果と課題を検討する本活動のような段階がSTEAM教育には必要であることがわかった。今後こうした活動を積み重ねていき、より高度なSTEAM教育の実践へとつなげていきたい。
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