理科において観察、実験は非常に重要である。しかし、小学校では、実験に不安を抱えている教員がいたり、理科の準備にかけられる時間は限られていたりするため、様々な危険が潜んでいるといえる。そのような不安や危険を解消し、より安全に観察、実験を行うためには、過去に発生した事故事例の傾向を明らかにし、教訓にすることが有効な手立てになると考えた。 本研究では、最新の小学校理科における実験事故の傾向を明らかにした上で、より安全に観察、実験を行うための方策を検討することにした。 最近の小学校理科における実験事故の傾向としては、4年生の「金属・水・空気と温度」の単元における事故の発生が目立つようになってきた。この単元から本格的に加熱器具を使うことになり、危険度も一気に増す学習である。さらに、教科書の実験数や安全に関する記述について調査したところ、他の単元と比較して、実験数や実験操作数が多いことが分かった。実験内容が複雑になっていくこともこの単元の特徴として挙げられる。そんな危険な状況下で、授業を担当する教員1人だけで全児童の安全に注意を払うのは不可能に近い。 そこで、より安全に観察、実験を行うための手立てとして、児童の安全意識を高めることに注目して、4年生を対象に授業実践を行った。過去の事故事例を参考にして、危険な場面を表現したロゴ(ピクトグラム)を自作した。これらのロゴを、実験計画や準備の段階で、児童に危険な場面を想起させて実験を行った。危険な場面を予測することで友達と声をかけ合ったり、慎重に実験をしたりする場面が多く見られた。実験前後のアンケートにおいても安全意識の高まりを確認することができた。 教員が児童の安全に気を配るのはもちろんであるが、児童の安全意識を高めることが、より安全に観察、実験を行うための有効な手段の1つになると考える。
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