研究の目的 2050年のカーボンニュートラル(脱炭素社会)を目指し、太陽光発電の電力系統への大規模な導入が進められているが、発電が環境に依存する為、電力系統全体でのレジリエンス(強靭性)の問題が顕在化している。特に、鹿児島県は桜島や口永良部島等の今も活発に噴火している火山を有しており、その火山灰の太陽光発電パネルへの降灰・堆積による発電出力の低下など地域的な環境要因を有している。この出力低下・変動は電力系統へ悪影響を及ぼすおそれがあるが、その影響についてはまだ評価されていない。そこで本研究では降灰による太陽光発電パネルの出力変動が及ぼす電力系統への影響をシミュレーションにより明らかにすることを目的に、火山灰の降灰量と発電出力の変動特性について試験し、その発電出力の特性を把握した。 研究の方法 エアーコンプレッサ・DCファン・電磁弁・PLC等から構成された装置を用い、太陽光発電パネル上に火山灰を均一に堆積させる模擬実験を行い、火山灰の堆積量と太陽光発電パネルの出力特性(電圧・電流・電力)を測定した。太陽光の模擬光源としてハロゲンランプを、負荷は電子負荷装置をそれぞれ用いた。 研究の成果 本研究では、桜島の火山灰を均一に堆積させた時の太陽光発電パネルの出力特性(電圧・電流・電力)を明らかにした。結果として、桜島の火山灰(粒径40μm以下)を風速4m/sの条件で堆積させた場合に、5g/m2相当の灰の堆積により、太陽光発電パネルの発電出力が約15%低下することを確認できた。また、発電出力は降灰量に比例して低下したことを確認できた。今後は得られた結果を基に、降灰を考慮した太陽光発電パネルのモデル化を行い、それらが大量に導入された電力系統の影響評価を数値計算により行う予定である。
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