術中迅速診断に使用する凍結包埋標本は、標本作製から薄切切片の調整までを数十分で実施することができ、また、加熱や有機溶媒の使用をしないため、抗原性の保持や細胞膜の構造維持に優れており、研究用試料としても利用されている。しかし、凍結時の氷晶形成による組織損傷や出入庫を繰り返すと細胞核の空砲化が生じるという欠点がある。凍結包埋標本を研究用試料として有効に利用するためには、これらの欠点を補う質の高い凍結包埋標本の作製が望まれる。そこで、生殖医療分野で卵子や受精卵を保存するために実施されている「ガラス化法」を凍結包埋標本作製に応用することを思案し、ガラス化法で研究用の凍結包埋標本を調整することで再現性の高い組織切片の作製が実現できるかを検証した。腎臓組織(手術検体の残余試料)を使用する。(1)ガラス化法による凍結包埋標本の作製、(2)組織切片の作製・染色、(3) 組織像の評価、を行った。 <結果> (1)受精卵や霊長類の細胞用に市販されているガラス化液を使用してガラス化凍結を行い、凍結包埋標本を作製した。作製過程による変化は認められなかった。 (2)ガラス化法で調整した凍結包埋標本より薄切組織切片を作製してヘマトキシリン・エオジン(Hematoxylin Eosin:HE)染色を実施した。コントロールと比較して染色生が弱い傾向にあった。 (3) HE染色標本を観察してガラス化法を施した標本の組織像をコントロールと比較した。さらに標本を再凍結、再薄切してHE染色を行い組織像の変化、再現性について検証した。コントロールと比較して組織像の差は認められなかった。
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