本研究は、オオタニワタリを熊本県天草地方の特産品とすべく、胞子増殖法の検討と苗生産法の検討、熊本県内の自生地の調査を行った。 ○胞子増殖法:ヘゴ板、ロックウール、水苔の3種の培地を5個ずつ準備した。計15の培地に、2021年7月に採取したオオタニワタリ胞子を撒いた。4種の液体肥料(観賞植物用2種:A・B、一般用1種:C、野菜用1種:D)、および対照区として水道水を2週間に1度散布し、胞子発芽に最適な培地と液体肥料の組み合わせを検討した。撒いた日より15日後ヘゴ板で発芽が始まり、27日後、水苔で発芽が始まった。ロックウールでは最後まで発芽は見られなかった。ヘゴ板が最も成長が早く、培地の種類が発芽と初期成長に大きく寄与することが示唆された。また、肥料Aおよび肥料Dを散布したものについて、葉身の色が濃く充実した葉を有することが確認できた。 ○苗生産法:生育が良かったヘゴ板撒きの幼苗を利用して苗の生産法を検討した。用土は赤玉土、ボラ土、鹿沼土を利用した。各土ともに2鉢準備し、それぞれに2週間に1度、肥料AとDを施肥する区分を設けた。研究期間内で最も大きく成長したものは、肥料Aを施肥した赤玉土を利用した区分であった。 ○自生地調査:熊本県における本種の自生は、現在天草市天草町の1か所で10個体前後が確認できるだけであった。8月の調査で、同町内の谷筋の砂防ダムに、9個体の自生を確認することができた。1月の調査では、かつて生育が確認されていた谷を調査したが、全く確認することはできなかった。
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