飼育下ゾウの管理手法はゾウとの直接の接触を伴わない準間接飼育法への移行が進み、正の強化手続きに基づくハズバンダリートレーニング(以下HT)の重要性が増している。HTにおいては、動物が適切な動作を行った際に与える報酬(強化子)の選定が重要な因子となる。強化子には野菜や果物、時にはヒト用の加工食品が利用されるが、季節による品質の変化、栄養組成の不適合など其々に課題がある。品質・栄養組成面では固形飼料(ペレット)が有効であり、専用に栄養設計され、費用対効果の高さからも広く利用されている。しかし準間接飼育では動物と飼育員が柵を介して一定の距離を取るため強化子を投げ与える場合があり、ペレットの転がり易い形状は致命的な欠点となる。 本研究では事前研究で得られたアンケート評価結果を基に、転がり難い形状に成型するため専用の型を独自に設計し、草食獣に適した繊維を多く含む組成でペレットを試作した。国内のゾウ飼育園のべ20園に配布した後、トレーニングでの実際の使用感およびゾウの嗜好性を確認したところ、事前研究での使用感から大幅な改善がみられ、試作ペレット自体の使用意向も向上した。特にペレットを発泡成形化したことで1粒あたりのカロリーを低減することができ、粒重量自体も軽くなったことで新たにエンリッチメントのアイテムとしての利用価値も広がった。今後は本研究で得られたアンケート結果を基に、よりトレーニングに扱いやすい形状へと改良し、最終的には市販化を見据え、ゾウ飼育園が日頃より取り扱える状態にできるよう開発を進めていく。
|