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○研究目的:食材魚は未解体のまま流通することが多いために中身の状態が分からず,その評価は主観的評価に頼っている部分が大きい.食材魚の品質及び組成評価の情報を,解体前に取得可能な客観的評価手法の確立が必要とされている.そこで,完全非損傷イメージングによる食材魚の品質・組成モニタリングシステムの開発を目的とした.本研究はこの第一段階として,画像診断に使用されている磁気共鳴画像診断装置(MRI)や超音波画像診断装置(US)を使用して,ブリを損傷させずに中身の情報が取得可能か検討した. ○研究方法:天然及び養殖ブリ(各5本)を対象とした.3.0TのMRIを使用して各ブリの胸びれ断面(腹側,側線部,背側及び血合)と肛門断面(腹側,側線部,背側)の脂肪含有率,見かけの拡散係数(ADC),拡散異方性(FA),T2*,T2,筋膜密度をそれぞれ測定した.次にUSによってMRIと同一断面画像を取得し,MRIと同じ部位においてUS輝度比を測定した. ○研究成果:MRIで測定した脂肪含有率は,肛門側線部を除くすべての部位において養殖ブリの方が天然ブリと比較して有意に大きかった.すべての部位において天然ブリよりも養殖ブリの方が,ADCは有意に小さく,FAは有意に大きく,T2*は有意に短くなった.養殖ブリのT2は,胸びれ腹側,背側,血合及び肛門腹側において天然ブリよりも有意に長くなった.天然ブリの筋膜密度は,胸びれ腹側において天然ブリよりも有意に大きくなった.MRIで測定した脂肪含有率とUS輝度比は,正の相関が認められた.養殖ブリのUS輝度比は,胸びれ背側,胸びれ血合,肛門背側において天然ブリよりも有意に大きかった. 以上より,MRI及びUSを使用することによって,ブリを損傷させずに組成評価のための情報を取得可能であることが明らかになった.
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