研究課題
肺移植後は他の臓器移植後よりも強い免疫抑制が長期間必要とされるため,サイトメガロウイルス(CMV)感染症のリスクが高く,バルガンシクロビル(VGCV)による予防投与が行われる.CMVの予防にはVGCVの活性代謝物であるガンシクロビル(GCV)の血中濃度が0.6 μg/mL以上必要とされており,通常VGCVは900 mg/日投与される.京都大学医学部附属病院において,2011年1月から2019年12月の間に肺移植が実施されたレシピエント170名を対象に調査を実施した結果,CMV予防にVGCVを使用した患者の27.6%(47/170)で副作用が原因で投与中断や減量が余儀なくされ.40.4%(19/47)の患者において,中断または減量後にCMV感染が疑われていることが判明した.加えて,CMV感染が続発する侵襲性肺アスペルギルス症のリスク因子となることが判明した.VGCV投与に伴う副作用は用量依存的に発現頻度が高まると考えられているが,薬物血中濃度との関連については未だ明らかにされていない. 本研究では,肺移植患者を対象に,VGCV投与に伴う副作用の予測指標として,GCVの血中濃度モニタリングが有用であるかどうかを明らかにすることを目的とした.京都大学医学部附属病院において,2021年4月1日から12月31日の間に肺移植が実施され,術後にVGCVが投与されたレシピエント16名を対象に,血中濃度と副作用との関連を調査した. Grade3以上の副作用が発現した患者(n=3)では,Grade2以下の副作用が発現した患者(n=13)と比べて血中トラフ濃度が有意に高いことが判明した. さらに,Grade3以上の副作用が発現した患者では副作用に伴うVGCVの投与中断率も有意に高かった.VGCV投与に伴う副作用の予測指標として,GCVの血中濃度モニタリングは有用であると考えられた.
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