集中治療部(ICU)入室中の患者では、様々な因子により分布容積やクリアランスが変動するため、添付文書に沿った用法用量で投与しても有効な血中濃度を保てない可能性がある。それにもかかわらず、非ICU患者のパラメータから算出された投与量を参考に経験的に投与量を決めざるを得ないのが現状である。そこで、本研究では、集中治療部(ICU)入室中の重症感染患者を対象に、ICU患者における汎用抗微生物薬の血中濃度を測定後、至適投与量を設計し、用量調整後の目標パラメータの達成率を評価することを目的としている。研究実績は以下のとおりである。 本年度は、腎代替療法(CRRT)施行下におけるシプロフロキサシン(CPFX)投与法の妥当性を評価した。対象は、CRRT施行中にCPFXを800mg/日投与中のICU患者7名とした。CRRTのモードは持続的血液濾過とし、濾過流量 600mL/h、血液流量 100mL/minとした。KhachmanらによるICU患者を対象とした2-コンパートメントモデルを基に、得られた血漿中CPFX濃度を用いてベイズ推定を実施した。薬物動態解析を行った結果、ベイズ推定後の方がベイズ推定前より、Ke(p<0.05)とCL(p<0.05)は小さく、Vss(p<0.05)は大きかった。また、AUC/MIC≧125の達成率は、それぞれMIC=0.25:100.0%、MIC=0.5:100.0%、MIC=1:28.6%、MIC=2:0%、MIC=4:0%であった。CLSIが定めているブレイクポイントでは、緑膿菌に対してMIC=1以下で感受性とされているが、CRRT施行中の患者にCPFXを800mg/日投与した場合のAUC/MIC≧125の達成率は28.6%と低値であった。そのため、患者によっては1200mg/日などの高用量で投与する必要性が示唆された。
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