●研究目的:腹部大動脈瘤(AAA)は自覚症状に乏しく,ひとたび破裂をきたすとしばしば致死的となる重篤な疾患である.AAAは経胸壁心臓超音波(TTE)検査施行時に偶発的に発見されることが多い.近年,我々の検討においてTTE検査で計測した上行大動脈径(AOD)が,AAAの予測因子として有用であることを報告し,その検討過程でAAAの進展には動脈硬化による中心血圧上昇が関与し,中心血圧の上昇が更に動脈硬化を増悪する悪性サイクルがあるとの着想を得た.本研究は,AAA症例における外科的治療介入前後でのTTE各計測指標,中心血圧検査の変化を検討することを目的とする. ●研究方法:当院でAAAに対する外科的治療介入を施行した14症例を対象とし,外科的治療介入前および治療後にTTE検査および中心血圧検査を施行し,得られた各計測値を基にして統計解析を行い,外科的治療介入前後におけるAODを含めたTTE各計測指標,中心血圧検査各計測指標および上腕血圧値についての比較,検討を行う. ●研究成果:AAA症例に対する外科的治療介入前後で上腕血圧値(sBP・dBP)に有意差は認めなかったもののTTE各計測指標と中心血圧検査各計測指標を比較したところ,術後に左室心筋重量係数および中心血圧検査各計測指標(SBP2・cSBP・AI・AIP75)が低下する傾向を認めた. AAAに対する外科的治療介入が中心血圧を改善し,降圧効果を示すことが確認された.
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