血管拡張作用を有する急性心不全治療薬剤であるミルリノンは腎排泄型薬剤であるため、腎機能が低下した患者や高齢者に合わせた投与設計が必要である。そこで本研究では周術期のミルリーラの血中濃度と腎機能の関連性を明らかにするため、血中濃度測定を行った。 名古屋大学医学部附属病院にて心血管手術の術中からミルリノンを開始したCcr;10mL/min以上の症例を対象とした。ミルリノンを投与開始後30分、120分、12-24時間後、24-36時間後の計4点にて採血を行い、HPLC/MS/MSにて血中濃度測定を行った。測定方法としてはMRM、positive ion mode で行い、内部標準物質としてオルプリノンを用いた。カラムはCORTECS;C18+2.7μm、移動相は5mM酢酸アンモニウムとアセトニトリルを用いた。検体を遠心分離した後、血漿100 μLに1%ギ酸ニトリル 300μLを加えInterSepを用いて固相抽出を行い、得られた抽出液を測定した。血中濃度から最小二乗法にて半減期を算出し、Ccrとの相関についてSpearman検定を用いて解析した。 2021年10月4日~2022年3月31日の期間において26例が対象となった。ミルリノンの投与量は0.1~0.25μg/kg/minであり、半減期 (h)の平均値±標準偏差はCcr;60mL/min未満では2.80±4.20、Ccr;60mL/min以上では0.92 ±0.94であった。腎機能の低下によって半減期の延長がみられたが、Ccrと半減期の相関についてはR2;0.05、p=0.087であり相関はみられなかった。 手術中にミルリーラを投与した場合、術前の腎機能からは血中濃度の推測が困難であることが考えられた。また、術中の出血量および人工心肺が影響している可能性があり今後検討が必要である。
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