研究課題
肺小細胞癌は肺癌の約10~15%を占める高悪性度の神経内分泌癌で、抗癌剤治療後の薬剤耐性が問題となっているが、未だその薬剤耐性獲得機構に対する知見は乏しい。本研究の目的は、薬剤耐性獲得機構の解明を目指すことである。そこで、肺小細胞癌の抗癌剤耐性細胞を作製し、次世代シーケンサーを用いて薬剤耐性分子の同定を試みた。研究材料は、抗癌剤エトポシドを作用させて樹立したエトポシド耐性細胞株(SBC1-ER)とその薬剤感受性細胞株(SBC1)を用いた。また、異なる抗癌剤のドキソルビシン耐性肺小細胞癌細胞株(H69AR)とその薬剤感受性細胞株(H69)も併用した。研究方法は、(1)SBC1ER、SBC1、H69AR、H69細胞からRNAを抽出し、次世代シーケンサーを使用して網羅的に遺伝子発現解析した(RNA-Seq)。(2)SBC1ERとSBC1細胞、H69ARとH69細胞のそれぞれ両群間で有意差(p<0.05)のある共通の遺伝子を抽出し、遺伝子オントロジー(GO) 解析を実施した。研究成果は、(1)SBC1ERとSBC1細胞で5244、H69ARとH69細胞で10028の発現変動遺伝子を同定した。(2)両群共通の遺伝子は334存在した。薬剤耐性に関与する遺伝子探索のため、334遺伝子をGO解析した結果、ATP-binding cassette(ABC)トランスポーター001とsolute carrier (SLC)トランスポーター277の候補遺伝子を選別した。この候補遺伝子001と277は、ヒト肺小細胞癌腫瘍のRNA-Seq、Microarrayのパブリックデータセット(GSE60052・GSE62021)を用いた解析でも同様に発現亢進していた。本研究により、肺小細胞癌における薬剤耐性獲得機構の一つとして、トランスポーターを介した制御機構が示唆された。
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Human Cell
巻: 35 ページ: 628-638
10.1007/s13577-022-00669-6.