ループス腸間膜血管炎 (以下、LMV) は、全身性エリテマトーデス (以下、SLE) に合併する病態である。LMVの症状において血管炎を伴う腸管出血が見られる場合は予後が悪いため、早期診断、早期治療が求められる。我々はSLE自然発症モデルマウスであるNZB/WF1マウスにToll様受容体7 (TLR7) アゴニストを継続刺激したLMV誘導マウスモデルを作製し、このモデルが血管炎を伴う腸管出血を起こすことを突き止めている。そこで、本研究の目的は、LMVの病態と関わりが深い血管炎に着目し、TLR7シグナルの過剰活性化により、血管内皮細胞や血管周囲細胞が傷害を受ける機序を明らかにする。 始めに、血管炎の発症機序において血管外から与える影響の検証を行った。LMV誘導マウスモデルの回腸を用いて、病理組織学的に特に血管近傍に集まる免疫細胞に焦点を当て解析したところ、誘導群では誘導初期から血管近傍にマクロファージや好中球等が浸潤していた。次に、血管内から与える影響の検証を行った。誘導群の回腸の血管近傍の有意な細胞浸潤は、LMV誘導1週間後に見られ始めたため、この時の血清中のサイトカイン濃度をサイトカインアレイを用いて測定した。その結果、誘導群では、6項目のサイトカインやケモカインが非誘導群に比べ有意に上昇した。今後は、血管内皮細胞株であるHUVEC細胞を用いて、LMVの誘導に伴い血清中で有意に増加していたサイトカインやケモカインの刺激によってHUVECが活性化することや、また、LMVの誘導によって血管周囲に浸潤してきた免疫細胞のTLR7シグナルの活性化により放出するサイトカインなどがHUVECの炎症応答に関与することを検証していく。
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