本邦で増加傾向である心血管、脳血管疾患の発症リスクをComputed tomography (CT)検査によるカルシウムスコアを応用して予測する為の研究である。カルシウムスコアは,低線量CT画像から計算可能で侵襲性が低く,スクリーニングに優れる指標だが、現在明確なエビデンスがあるのは冠動脈疾患との関連性のみである。申請者は従来の解析対象である冠動脈だけでなく、大動脈までその解析対象を広げ、更に石灰化を区域分類することによって得られる区域別カルシウムスコアと各種疾患との関連を明らかにすることを目的に検討を進めた。これまでに得られた知見としては、家族性高コレステロール血症患者連続100例程度のCT画像から,大動脈基部のカルシウムスコアと心疾患リスクの関係を明らかにした。これに加え、健常群も交えて比較しより強固なエビデンスを確立するため、連続300例程度について区域別カルシウムスコアの算出をし、心疾患リスクとの関係を明らかとするため検討を続けている。心臓弁膜症や脳梗塞などの,疾患発症リスクも区域別カルシウムスコアとの関連が強く予想されるため、解析した区域別カルシウムスコアと、各疾患イベントと対比してその関連性を明らかにすべく検討を進めている。区域別カルシウムスコアの臨床的有用性を明らかにした後、区域分類を人工知能を用いて自動化させることが本研究の今後の展望である。区域別カルシウムスコアの解析には膨大な時間的コストと、解析者による差が生じることが問題となるが、人工知能を用いることでその欠点を補い、臨床応用が可能になると考える。これにより、低線量CTという低侵襲な検査から、心血管、脳血管疾患に対してリスク分類が可能となる。高リスク群では積極的な治療介入により重症化の抑制に,低リスク群では侵襲的な検査の省略により患者の負担軽減や医療経済効果が期待できる.
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