2019年3月~2020年2月に岐阜大学病院の救命救急センターに入室した患者を対象に、日常業務で採血された血液サンプルの残血清を用いて、SDC-1の血中濃度をELISA法にて測定し、年齢、性別で調整した線形混合モデルを用いて、SDC-1値が翌日の患者の状態に与える影響を検討した。18歳未満、急性血液浄化療法の施行、および72時間以内の救命救急センターからの退室症例は除外した。期間中に94人の患者が登録され、831サンプルが測定された。年齢の中央値は67歳、男性と女性の割合は約3:1であり、ICU入室時のSOFAスコアの中央値は6であった。 救急集中治療領域の患者は健常人と比較して、SDC-1値は高値であった。また、年齢に関係なく、SDC-1値の上昇が、死亡率と有意に相関した。各種臨床検査値との比較では、SDC-1の値は、翌日の肝機能・腎機能マーカーであるAST、ALT、クレアチニン、BUNに有意な影響を与えていた。 各臓器別では、肝機能マーカーでは、SDC-1値が高い患者において、翌日のAST、ALTは常に高値となっていた。腎機能マーカーでは、SDC-1値が高い患者において、翌日のCRE、BUNは常に高値となっていた。凝固系マーカーでは、SDC-1値が高い患者において、初期では翌日のFDP、D-dimerは常に高く、ATⅢは常に低くなっていた。一方で、後期では翌日のFDPの差は収束し、D-dimerは逆転していた。ATⅢは常に低くなっていました。これは、補正、DIC治療などの影響と考えられた。また、SDC-1値は、1日の輸液量(mL)にも有意な影響を与えており、SDC-1値が高い症例では、より多くの輸液量を必要としており、血管透過性が亢進している可能性が示唆された。 結論として、血清SDC-1は臓器障害の早期発見のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。
|