末梢動脈疾患(PAD)患者は間欠性跛行を呈し身体活動量が低下する悪循環により、動脈硬化が進展して心血管イベントを高率に引き起こすと言われている。PAD患者に対する効果としてはカフを用いた短時間虚血・再灌流の繰り返しによって最大歩行距離の増加と間欠性跛行の緩和が得られたと報告された。また電気刺激による虚血肢への効果としては経皮的電気刺激による間欠性跛行の緩和(Besnier他 ,2017)や下肢血流の改善が報告されている。 本研究の目的はPAD跛行患者において、運動前に他動的な短時間の虚血や骨格筋電気刺激を行い虚血耐性の効果を検証する事である。 対象は跛行症状を伴うPADにてリハビリ処方のあった8名(平均年齢70±22歳:男性5名)、他動虚血を実施したのは8名のうちの1名(74歳男性)であった。主評価項目は跛行出現時間とし、10分間の異なる電圧(4Hz、20Hz)での電気刺激、またはカフを使用し膝窩に5分間の他動虚血を実施した後、修正ガードナー法を実施した。 結果はベースラインで評価(平均286.4sec)に対し、跛行出現時間は20Hzで133%(平均381.4sec)、4Hzで135%となった。他動虚血は評価した1名のベースライン200secに対して82.5%(165sec)であった。副次評価項目のFMDではベースライン4.6%に対し20Hz8.3%、4Hz7.7%であった。他動虚血のFMDは2.6%から5.5%と改善が得られた。 最も跛行出現時間を延長したのは4Hzでの電気刺激(ベースライン比135%)であった。電気刺激による血管内皮改善効果や血流の改善効果は報告されており、同様の結果が得られたと思われる。20Hzでの強縮による強い筋収縮よりも、4Hzでの連続的な単収縮による収縮回数が結果に影響したと考えられる。他動虚血のみでは十分な血管内皮の改善が得られなかった。
|