本研究は、一般的な健康診断にも欠かせない血液検査項目のなかの血算平均赤血球容積(MCV)測定の正確性を探る研究である。MCVはさまざまな施設で測定され血液疾患の診断にも重要な項目であるが、現状は施設間差・機器間差があること、また患者個体の要因によりMCVが正確に測定できない場合があることはあまり認識されていない。今回、MCVに影響を及ぼすファクターのうち浸透圧、さらには浸透圧に影響をおよぼす陽イオンに関して検証を行った。 今回、陽イオンのうちカリウムイオンK+の影響について検証を行った。同意を得た健常者ボランティア10名より末梢血液の採血を実施した。採血管はEDTA-2KとEDTA-3K、EDAT-2Na採血管を用いた。MCVの平均値はEDTA-2K:86.4fL、EDTA-3K:84.5fL、EDAT-2Na:85.5fLであった。10名全例でEDTA-2K > EDAT-2Na > EDTA-3Kであった。また、EDAT-2KとEDAT-3Kにはp<0.001で有意差が認められた。次にEDTA-2K濃度について検討を行った。EDTA-2K採血管で採血後、MCVを測定した。測定後の検体にEDAT-2Kを添加しサンプル中のEDTA-2K濃度を増加させ、同様にMCVの測定を行った。EDAT-2Kを追加添加したサンプルはp<0.001で有意にMCVが上昇した。これらのサンプルについて薄層塗抹標本を作成し、顕微鏡下で赤血球形態の観察を行ったが光学顕微鏡下での有意な赤血球径の変化は認めなかった。 以上より、サンプル中の陽イオン濃度は実際の赤血球径ではなくMCVの測定に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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