研究実績の概要 |
新型コロナウイルスの感染予防にマスク着用が新しい生活様式になった.厚生労働省は,マスク着用による心拍数や呼吸数,血中二酸化炭素濃度,体感温度の上昇など,身体への負担について注意を呼びかけており,マスク着用による健康への様々な影響について調査が必要である.大気中で20.93%ある酸素濃度は,呼気では15%~17%に低下する.マスク着用により,酸素濃度が低く二酸化炭素濃度が高い一度吐いた空気を吸うことや,本来なら冷たい空気を吸って温かい空気を吐き調節される体温が,うまく調節できないことで脳内の血管が拡張し,頭痛の原因にもなると考えられる.室内の温度と二酸化炭素濃度及び,マスク着用時の呼吸における二酸化炭素濃度のストレスとの関係について可視化することにより,身体への影響を客観的・定量的に把握することが可能となる. 本研究では,マスク着用時の室内温度と二酸化炭素濃度の身体への影響を,実験により自律神経系の指標と血液中の酸素飽和度を測定し検討した. 評価には,接触型の心電図計を用い,心拍数と心拍変動から自律神経の状態を解析した.また,パルスオキシメーターを用いて血液中の酸素量の指標である酸素飽和度(SpO2)を測定し,マスク着用による酸素供給量への影響を評価した. 今回の結果では,標準的な二酸化炭素濃度の室内でマスクを着用した場合のストレス指数は,基準値より高く,高水準の二酸化炭素濃度の場合より高くなるケースが確認され,室内の二酸化炭素濃度が基準値以下でも,マスク内の二酸化炭素濃度は高くなり,ストレスに影響する可能性が示唆された.マスク着用による酸素供給量ついては,顕著な影響を認めなかった.今後,更に詳しく調査する予定である.
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