研究課題/領域番号 |
21H04342
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
須長 正治 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (60294998)
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研究分担者 |
浅野 千恵 (村木千恵) 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (00299174)
市原 恭代 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 准教授 (10301813)
伊原 久裕 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (20193633)
中村 美亜 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (20436695)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 色覚異常 / 色彩科学 / アート表現 / 色彩教育 / 社会包摂 / 色覚多様性 |
研究実績の概要 |
色彩は外界にはなく,眼に入る光の質的量的情報をもとに各個人の脳の中で創発される知覚表象であり,その知覚表象を創発するメカニズムを色覚という.その色覚には多様性があり,全ての人は同じ色を知覚しているとは限らない.その代表例が色覚異常と呼ばれる色覚特性である.しかし,一般的には,色彩が外界にはないという認識は乏しく,色が外の世界にあるものとして思い込んでいる.この思い込みが色彩教育の現場に影響を及ぼし,色覚異常という色覚特性を持つ人の色の見えはまったく考慮されていない.そこで,本研究課題では,色彩科学チーム,アート表現チーム,色彩教育チームの3つの分野の連携により,色彩科学により色覚異常の色知覚特性を明らかにし,2色覚のアートによる表現の場をデザインし,さらにその場を色彩教育へと展開していき,多様な色覚特性を受容する仕組みを構築することを目指す. 令和3年度は,小学校の教師,中高校の美術教師を中心に色彩教育での色覚異常の認知度や対応について,アンケートにより調査を行った.その結果,色覚異常についての理解が不足していること,さらに,色覚異常を知っていても,その特性を持つ生徒に何らかの対応もしてないことなど,問題点が明らかになった.また,そもそも色彩について正しい知識と誤った知識が混在した状況であることも明らかにすることができた.また,アート表現チームと色彩教育チームにて,数種類の色フィルタと色紙を用いた色覚異常を包摂する色彩教育プログラムの考案を行った.これらの結果は,令和3年度日本色彩学会関西支部大会にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度は,コロナ禍により,2色覚を被験者とした色彩科学関連の実験を進めることができなかった.また,色覚異常を包摂する色彩教育プログラムを考案したものの,大人数でのワークショップを開催することも控える必要があったため,次年度に延期することになった.
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今後の研究の推進方策 |
今後,色彩科学チームでは,令和3年度に行う計画であった3色覚と2色覚の間での固有名詞を使った色名表現による色彩コミュニケーションの有効性の検討を行う.また,アート表現チームと色彩教育チームが共同し,色覚特性に依らない色知覚の主観性と多様性を体験的に学習できるワークショップの開発に取り組み,そのワークショップを開催する. 並行して,令和3年度に調査した小学校教師および中学高等学校の美術教師を対象とした色覚に関するアンケートの結果と対応させるために,色覚異常を持つ方の美術や図画工作を中心とした学生生活での体験や配慮についてのアンケートを実施する計画である.さらに,色覚異常の方には困難と思われている職業として芸術家やデザイナーが挙げられているが,実際に,芸術家やデザイナーとして活躍している色覚異常を持つ方へのインタビューを行い,その色覚異常であることの意識や仕事を行う上での戦略などの体験を調査する.
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