研究課題
モンゴル・ブーンツァガン湖および流入河川であるバイドラグ川にセディメントトラップを設置し,陸水環境とその地域の気候との関連の調査を実施した。採取したトラップ試料について、炭酸塩含有量、有機物含有量、鉱物組成を分析した。河川堆積物、湖沼堆積物ともに石英、長石、白雲母、緑泥石とイライトが検出されたが,湖のトラップ試料では、モノハイドロカルサイト(MHC)などの炭酸塩鉱物が検出された。湖底堆積物中に存在するMHCは、湖で自生されたと考えられ,アルカリ塩湖が二酸化炭素固着能をもつ可能性が高いことが示された。また、採取した試料の重量とトラップ設置期間から堆積速度を算出したところ,6月と7月で値が倍異なりそれぞれ0.51と1.03 g/cm2年であった。炭酸塩と有機物の含有量は、7月のサンプルでは低く、6月のサンプルでは比較的高い。堆積物の量は降水量と相関し,7月に集水域からの土砂負荷が高くなったことが原因だと考えられる。またそのため湖水で生産される炭酸塩と有機物の含有量が希釈されたのであろう。またロシア人との共同研究で採取予定であった夏季の堆積物のコアリングができなくなったため,別の方法でコアを採取する方法を吟味した。そのために2月から3月に調査に行き,湖の結氷の状態および,金沢大学所有のコアラーで掘削が可能かどうかテストを行なった。その結果,自動車で氷上を走ることは難しいが,人が歩くのは問題ない程度にまで結氷していることが確認できた。テスト採取では1m程度しか採取できなかったが,装備の工夫により,より長いものの採取も見込まれることも確認できた。また大気の動態や観察方法に関する手法開発および湖の微量元素濃度の分析等も進め一部論文としてまとめた。
3: やや遅れている
2021年度に取得予定であった湖沼堆積物コア試料がコロナ禍による渡航制限で実施できず2022年度に延期した。コア採取はロシア人研究者との共同研究として実施する予定であったが,2022年に勃発したロシアーウクライナの戦争によりロシア人との共同研究ができなくなったため別のコア採取法を取り入れる必要があり,その計画変更により進捗が遅れている。
冬季のコアの採取法についておおよその方針を立てることができたので,2023年度により長いコア試料採取を試みる。また湖水における二酸化炭素吸収能について観測的にも明らかになり,温暖化対策としての湖の活用を視野に入れ,さらにその動態についての調査を実施する。
所属部局ウェブサイト:https://www.ki-net.kanazawa-u.ac.jp
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Journal of Hazardous Materials
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