研究課題/領域番号 |
21H04378
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
杉山 三郎 岡山大学, 文明動態学研究所, 特任教授 (40315867)
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研究分担者 |
佐藤 悦夫 富山国際大学, 現代社会学部, 教授 (40235320)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | テオティワカン / 古代都市 / メソアメリカ / 古代モニュメント / 古代儀礼場 |
研究実績の概要 |
テオティワカン「石柱の広場複合体」プロジェクトは、前研究費(基盤研究A: 17H01650)の成果を発展させ、「石柱の広場」と、「死者の大通り」を挟んでセットで構築された「太陽のピラミッド北の広場」を同時に発掘している。古代都市の中心地区にある両施設は東西中心軸を共有し、均整のとれた相互に補完的な複合体であり、国家の中枢となる儀礼・国家行事を担っていたと思われる「石柱の広場複合体」を成す。本プロジェクトにより両区域から今まで得られたデータは、蓄積された3大ピラミッド内部から出土した資料と異なり、国家儀礼の準備や祭・饗宴の内容、さらに儀礼後の処理を示す貴重なデータが出土している。2021年7月から9月まで行われた「石柱の広場複合体」の発掘では、以下の成果を得ている。 2016年度から出土し始めたマヤ壁画の破片はその後も散在することが確認されており、2021年度は分布する地区の西側のリミットを確認し、わずかながら貴重な図像の破片をさらに得ている。その他、北の広場(Plaza 50)のさらに北側施設(建造物44B)への接続部分をトレンチ発掘により確認した。「死者の大通り」をはさんだ東側の「太陽のピラミッド北の広場」は、「太陽のピラミッド」に直接接した大複合体であり、また1960年代に多様な壁画が出土している「太陽の宮殿」とも接しており、その相互関係を探るため、両地区にまたがるトレンチ発掘を行った。「太陽のピラミッド」で行われたであろう儀礼や、関係する神官層の活動、生活の痕跡を含む層位が記録された。両地区を直接結ぶアクセスは確認されず、壁画の豊富な宮殿地区に対して、北の広場は異なった空間配置の住居施設と指摘された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「石柱の広場」の集中発掘では、予定通りに目的を達成し、予想以上の古代人の特異な行動を傍証するデータを得ている。中心の広場で行われた国家儀礼と饗宴で使われたと思われる大量の食器が意図的に壊されて、一度に埋められた状況証拠が明らかとなった。層位関係から、中心広場とそれを囲む5つのピラミッド型基壇が建立された時に執り行われた行事と考えられ、一度の儀礼を復元する貴重なデータである。また、マヤの宗教センターや、オアハカのモンテ・アルバン古代都市などの遠隔地からの饗宴参加を傍証することができた。さらに、北の広場の東地区からは、いけにえ儀礼にさせられた人物の骨片の補完的なデータも得ることができた。 「太陽のピラミッド北の広場」のトレンチ発掘では、「太陽の宮殿」とも、お互い独立した関係を確認できたが、さらに東西方向に発掘区域を広げて、両施設のつながりを探求する必要がある。しかしながら、「太陽の宮殿」の北のトレンチ発掘区域も、古代都市の最盛期の床面に達するまでに3メートル以上の堆積層があり、さらに都市の草創期のレベルまで掘り下げるには、大量の土層を排除する作業がまず必要となる。現在得られた土器、石器、また壁画の小破片など、遺物の整理、分析作業が進み、さらに広場全域から得られた遺物との比較研究が必要となる。
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今後の研究の推進方策 |
本来、ピラミッド調査で成功したトンネル発掘では、直接最下層にたどり着き、それ以後の時期の建造物を壊さずに最盛期、さらに草創期の建築レベルでの調査が可能であった。しかしメキシコ政府考古学審議会の方針により、トンネル発掘への危惧から、内部調査が困難になり、今まで掘ったトンネルを全て埋め戻し、オープンスペースでの従来の発掘で行った。時間と経費がよりかかり、さらに保存問題から下層への探索が難しい状況で、今後も考古学審議会と方法論の交渉を同時にすべきと考えている。戦略的に難しい戦術だが、長期的な保存問題を考えた場合、場所により地下式のトンネル発掘と平面発掘を組み合わる方法がベストと考える。 今後「石柱の広場」では、Plaza50の北側施設との関係をさらに追求し、北西部で確認されている早期の広場の北側を区切る壁の延長も追求し、初期の都市計画についてのデータ確保を目指す。同時に古代国家の運営に携わる統率者集団の衣食住、また儀礼に関する行動や国家運営のメカニズムの復元を目指す。「太陽のピラミッド北の広場」においては、その全体像を把握するため、まだ全く試掘がされていない北東地区の北壁と東壁の交錯地区を発掘調査し、同時に内部での営みに関わる資料の習得を目指す。さらに「北の広場」北西部についても、「死者の大通り」からのアクセスについて調査を進める。
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