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2021 年度 実績報告書

空間・暴力・共振性から見た中東の路上抗議運動とネイション再考:アジア、米との比較

研究課題

研究課題/領域番号 21H04387
研究機関千葉大学

研究代表者

酒井 啓子  千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (40401442)

研究分担者 山本 薫  慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 講師 (10431967)
後藤 絵美  東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (10633050)
松永 泰行  東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20328678)
小川 玲子  千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (30432884)
岡崎 弘樹  千葉大学, 大学院人文科学研究院, 日本学術振興会特別研究員(PD) (30860522)
鈴木 啓之  東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任准教授 (50792488)
末近 浩太  立命館大学, 国際関係学部, 教授 (70434701)
研究期間 (年度) 2021-04-05 – 2024-03-31
キーワード地域研究 / 国際関係論 / トランスナショナル / 移民
研究実績の概要

本課題では、2019年以降中東を中心に世界で同時多発的に発生する路上抗議運動を取り上げ、特に、路上抗議運動が構築する共同体の自助性、自立性の強さと、そのトランスナショナルなネットワークに着目し、若年層が追求する新たな「国家」のありかたは何かを分析するための共同研究を実施している。R3年度は中東のイラク、シリア、パレスチナといった紛争地域における社会運動の実態を研究対象とした。各分担者はR3年度は世界大に拡大する新型コロナウィルス感染症によって、海外渡航して現地調査を実施することも、海外からカウンターパートを招聘して共同研究を実施することもできなくなったため、主として現地の研究者に調査依頼を行ったり、オンラインで現地の研究者、ジャーナリストや作家とつなぎ、研究交流、意見交換を行い、必要な調査研究を進めた。イラクではBayan研究所の研究員に委託して路上抗議運動の現場のスローガンや壁絵を写真に収める他、運動家へのインタビューを実施した。繰り越しを行ったのちには渡航制限がやや緩和されていったため、パレスチナに関して、鈴木(分担者)の主導で社会運動研究者のパールマン教授を米ノースウェスタン大学から招聘、早稲田大学にて対面のワークショップを実施した。シリアについては、岡崎(分担者)が現地を訪問した写真家小松氏の講演会を実施したり、シリア人反体制活動家で作家のサーリフ氏を日本に招いて、東京、広島など各地で講演会、研究会を実施した。イラクについては、バグダード大学との共同で実施したワークショップにクルド問題研究者の吉岡氏を研究協力者として派遣し、学術交流を実施した。またアフガニスタンから退避したカーブル大学教授との間に、数回研究会を実施した。これらの成果は、2月に社会運動の比較分析セミナーを東大で開催、来日したイラク、カタールからの研究者とともに密な研究交流を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

イラクに関する社会運動調査については、上述したように、イラクのバヤーン研究センターとの間で共同研究を実施、このデータをもとにバグダード大学やムスタンシリーヤ大学の同分野研究者とオンラインで研究交流を進め、順調に研究が進められている。
一方で繰り越し後は対面での研究交流も可能な限り実施し、上述したようにノースウェスタン大学のウェンディ・パールマンとの意見交換を行った他、UNICEFレバノン事務所のラーウィヤ・アッタウィールを招聘してレバノン、シリアの社会運動の実態についての講演を行うなど、研究交流を活発化することができた。また上述したように、クルド地域における社会運動調査のために研究協力者の吉岡明子をイラクに派遣したが、同時にクルド問題についての議論を深めるため、イランのクルド運動を研究するモスタファ・ハリーリを千葉大学の特任研究員に雇用して、分担者の研究領域でカバーできない地域の調査研究を進めた。
オンラインによる研究交流や成果の社会発信は、国内外の研究者をつなぐために効果的で、これまでウェブ・セミナー「『アラブの春』を振り返る:2011年エジプト」、緊急ウェビナー「エルサレムを起点にパレスチナ/イスラエルの現在を考える」、特別シンポジウム「イラク戦争から20年:イラク、中東、アメリカ、国際社会はどう変わったか」など、本研究課題に関連する現代的なテーマを時宜に合わせて開催し、多くの視聴者の参加を得た。
他方、トランスナショナルな抗議運動を研究するうえでの理論研究として、オーストラリア国立大学やヨーロッパの地域研究者、IR研究者と、オンラインでのブレーンストーミングを定期的に続けている。繰越期間中に彼らを招聘して対面でのワークショップを企画したが、各国の感染症対策の違いなどから、実現に至っていない。

今後の研究の推進方策

トランスナショナルな抗議運動を研究するうえでの理論研究として、オーストラリア国立大学やヨーロッパの地域研究者、IR研究者と、オンラインでのブレーンストーミングを定期的(月一回ペース)に続けてきた。今後は海外との渡航制限も緩やかになり、ワークショップを実施し本格的な理論構築のための対面会議を行う必要があるため、2023年秋に5-6人の地域研究・IR研究者を東京に招聘し、社会意識・社会運動のトランスナショナルな伝播をグローバル歴史社会学などの理論的枠組みで、どのように分析できるかを議論する。この理論構築に関する議論においては、上記の定例オンライン会議の過程で向山直佑(オクスフォード→東大に移動)が積極的な関心を示し議論に貢献してきたことから、新たに研究分担者とし、東京での対面ワークショップの企画運営の中核を担ってもらうこととする。
それに平行して、引き続き分担者が担当する地域(イラク、シリア・レバノン、イラン、エジプト、パレスチナなど)に加えて、クルド地域やアフガニスタンなどにおける社会運動・抗議運動の事例についての研究を進める。そのため、京大に移動したモスタファ・ハリーリを新たに研究分担者に加え、イランおよびクルド地域の社会運動に関する研究を進める。さらにはシリア、パレスチナなど、これまでオンラインでのみ意見交換してきた紛争地の研究者、作家を日本国内に招聘し、より議論を深めることを企画している。
一方で、円安や原油価格の高騰といった問題によって渡航費が急騰していることから、予定していた海外調査や招聘計画に支障が出ることが十分予想されるため、引き続きzoomなどオンライン会議を活用する必要があり、そのためのシステム整備を進める。さらにはオンライン会議のための通訳謝金なども十分に手立てする必要がある。

  • 研究成果

    (27件)

すべて 2023 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件) 図書 (4件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] バグダード大学(イラク)

    • 国名
      イラク
    • 外国機関名
      バグダード大学
  • [雑誌論文] レバノン第20期国民議会選挙と「二大政党体制」の動揺2022

    • 著者名/発表者名
      末近浩太
    • 雑誌名

      中東研究

      巻: 545 ページ: 86-100

  • [雑誌論文] <論考>中東政治研究におけるイスラーム主義の位相 --「方法論的セキュラリズム」を超えて--2022

    • 著者名/発表者名
      末近 浩太
    • 雑誌名

      イスラーム世界研究

      巻: 15 ページ: 205~221

    • DOI

      10.14989/269334

    • 査読あり
  • [雑誌論文] レバノン・ヒズブッラーによる「二正面抵抗」のフレーミング2022

    • 著者名/発表者名
      末近 浩太
    • 雑誌名

      日本中東学会年報

      巻: 37 ページ: 31~59

    • DOI

      10.24498/ajames.37.2_31

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ゴミを出さずに消え去ることの困難 (アメリカの政権移行と中東国際関係)2021

    • 著者名/発表者名
      酒井啓子
    • 雑誌名

      国際問題

      巻: 702 ページ: 1-4

  • [雑誌論文] 路上抗議運動と軍の厄介な関係 (特集 「アラブの春」から10年)2021

    • 著者名/発表者名
      酒井啓子
    • 雑誌名

      季刊アラブ

      巻: 176 ページ: 8-10

  • [雑誌論文] 「ロウハーニー後のイランとバイデン政権」―対イラン制裁とイラン核合意の行方」2021

    • 著者名/発表者名
      松永泰行
    • 雑誌名

      『国際問題』

      巻: 702 ページ: 32-39

  • [雑誌論文] イスラーム主義とは何か:政治と宗教の関係を考える(連載「イスラーム主義を読む」(1))2021

    • 著者名/発表者名
      末近浩太
    • 雑誌名

      治安フォーラム

      巻: 9 ページ: 47-55

  • [雑誌論文] パレスチナ問題の現状と今後の課題2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木啓之
    • 雑誌名

      歴史地理教育

      巻: 928 ページ: 20-25

  • [雑誌論文] 解説 『監獄』となったガザ、エルサレム2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木啓之
    • 雑誌名

      中央公論

      巻: 1653 ページ: 132-135

  • [雑誌論文] 停戦でも消えない課題:パレスチナと国際社会2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木啓之
    • 雑誌名

      世界

      巻: 946 ページ: 70-77

  • [学会発表] Rap music as resistance?: Moods and Music of Youth2023

    • 著者名/発表者名
      Kaoru YAMAMOTO
    • 学会等名
      RSGC Seminar on Social Problems in the Middle East: Establishing Research Networks between the Middle East and Asia
    • 国際学会
  • [学会発表] How Does Geo-Historical Factor Affect Voting? Case of Baghdad in Election 20212022

    • 著者名/発表者名
      Keiko SAKAI
    • 学会等名
      APSA American Association of Political Science Annual Meeting 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] “Nation/state-building and Democratization of the Post-Arab Spring Libya: An Analysis of the 2019 Survey,” Panel 1A “(Re-)Emergence of Authoritarianism in the Middle East: Libya, Jordan, Turkey, and the Triumph of Illiberal Regional Order”,2022

    • 著者名/発表者名
      Kota SUECHIKA
    • 学会等名
      The 24th Mediterranean Studies Association Annual International Congress, Universidade Nova de Lisboa20
    • 国際学会
  • [学会発表] 「「アラブの春」以降の対イラン脅威認識の変遷を探る:アラブ諸国主要紙の計量テキスト分析から」2022

    • 著者名/発表者名
      山尾大・末近浩太
    • 学会等名
      日本国際政治学会2022年度研究大会
  • [学会発表] 『Slingshot Hip Hop』から15年―パレスチナ・ラップの現在2022

    • 著者名/発表者名
      山本薫
    • 学会等名
      第3回辺境ヒップホップ研究会(NIHU東ユーラシア研究プロジェクト みんぱく拠点(宗教とサブカルチャー))
  • [学会発表] 1970年代における連帯運動と訪日パレスチナ人:現代史におけるパレスチナ問題の射程2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木啓之
    • 学会等名
      日本中東学会第28回公開講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 書き留められた記憶:パレスチナ人回顧録に描かれたユダヤ人との邂逅2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木啓之
    • 学会等名
      日本ユダヤ学会・2022年関西例会
  • [学会発表] Sources of Candidates’ Reputations According to Political Bloc in Post-2003 Iraqi Election: from sectarian mobilization to the myth of social activism2021

    • 著者名/発表者名
      Keiko SAKAI
    • 学会等名
      International Political Science Association
    • 国際学会
  • [学会発表] “Critical Geopolitics of the Syrian Conflict: The Territorial Partitions of Bilad al-Sham and Beyond,” Panel 6B “Critical Perspectives on Eastern Mediterranean Security,”2021

    • 著者名/発表者名
      Kota SUECHIKA
    • 学会等名
      The 23rd Mediterranean Studies Association Annual International Congress
    • 国際学会
  • [学会発表] “Israeli Zionists or Syrian Takfiris: A Quantitative Analysis of Hezbollah’s Framing of Resistance,” Panel RC42.04 “Evolving Methodologies in the Study of Middle East Politics,”2021

    • 著者名/発表者名
      Kota SUECHIKA
    • 学会等名
      The IPSA 26th World Congress of Political Science, “New Nationalisms in an Open World,”
    • 国際学会
  • [学会発表] Ta'lim al-Lugha al-'Arabiyya fi al-Jami'at al-Yabaniyya(アラビア語:日本の大学におけるアラビア語教育)2021

    • 著者名/発表者名
      Kaoru YAMAMOTO
    • 学会等名
      Al-Lugha al-'Arabiyya fi al-Yaban: al-Waqi' wa al-Ma'mul (日本におけるアラビア語:現状と展望)
    • 招待講演
  • [図書] 「春」はどこにいった2022

    • 著者名/発表者名
      酒井啓子
    • 総ページ数
      272
    • 出版者
      みすず書房
    • ISBN
      9784622095309
  • [図書] 「歴史総合」をつむぐ2022

    • 著者名/発表者名
      歴史学研究会
    • 総ページ数
      304
    • 出版者
      東京大学出版会
    • ISBN
      9784130230797
  • [図書] インフォーマルな政治制度とガバナンス2021

    • 著者名/発表者名
      日本比較政治学会
    • 総ページ数
      208
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • ISBN
      9784623092444
  • [図書] シリア・レバノン・イラク・イラン2021

    • 著者名/発表者名
      中村 覚、末近 浩太
    • 総ページ数
      276
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • ISBN
      4623088251
  • [学会・シンポジウム開催] 第 13 回 日本・イラク合同学術会議 「日本とイラクの歴史、政治と社会:両国の視座から」2022

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公開日: 2023-12-25  

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