研究課題/領域番号 |
21H04399
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
太田 亘 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (20293681)
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研究分担者 |
大西 匡光 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (10160566)
大屋 幸輔 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (20233281)
笠原 晃恭 大阪大学, 経済学研究科, 講師 (50811410)
山田 昌弘 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (60732435)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | 証券取引 / 実物投資 / ファクターモデル / 株価指数関連取引 |
研究実績の概要 |
本研究は、投資家の証券取引、その結果として形成される証券価格、および発行会社の実物投資の相互関連を解明することを目的としている。実物投資についてTobin's Qの説明力が低い原因の一つが証券市場の非効率性にあるとの視点に立ち、証券価格が各種情報をより反映しているとき、より効率的な実物投資が実行される、という仮説を検証するとともに、証券の価格形成において、実物投資リスクが重要なリスクファクターの一つとなっているかを検証する。同時に、近年の証券市場の変化、例えば株価指数関連取引の活発化が、証券取引および企業の実物投資にどのような影響を与えているかについて明らかにすることを目的としている。これまで、主として、証券取引および証券の価格形成について分析を進めた。上場企業が発行する株式の収益率を、株価指数との連動部分とそれ以外の固有部分とに区別し、それぞれの価格形成が効率的であるかを分析するための手法の選択・開発を行うとともに、それら手法を日本市場に適用し分析を行った。株価指数については、各取引日の取引開始時に効率的な価格形成がなされていることが知られているが、取引開始前からどの程度どのような変化をしながら株価指数が効率的になるかを分析し、現物市場の開始前から効率的な価格形成がなされているという結果を得た。各銘柄の固有部分の価格形成について、各取引日の取引開始直後および取引終了直前に価格に情報が織り込まれることが知られているが、近年は取引開始直後がより重要になっている、一方で取引量は指数関連取引などにより取引終了前により集中するように変化している、ということを明らかにした。また、企業が開示した情報がどのように価格に織り込まれるかについて、日本市場における分析を行い、他国でいわれている流動性要因は必ずしも重要ではない可能性がある、という結果を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データベースの整備、理論の構築、各種指標の開発を予定していたが、計画通りに進んでいる。データを購入するとともに、データから各種指標の作成を進めており、分析に用いるデータベースが整いつつある。証券取引においては大口投資家の注文が価格形成に大きな影響を与えることがあるが、それを実証的に特定して影響を検証するため、大口投資家の発注戦略に関する理論的分析を行い、その成果を複数の論文にまとめている。各上場企業が発行する株式の価格形成について、株価指数連動部分と固有部分とを区別し、それぞれについて既存指標の評価および必要な場合は新指標の開発を行った。株価指数は、個別銘柄に比べてより効率的な価格形成が行われていることが知られているが、さらに取引開始前の価格形成を分析する手法を開発するとともに、それを用いた実証分析を行い、取引開始前からどの程度効率的な価格形成が行われているかを定量化した。また、固有要因の価格形成について、日中の取引パターンを分析することにより、以前は取引開始後および取引終了前に固有要因が価格に織り込まれているが、近年は、取引開始直後に固有要因が価格に織り込まれるようになったことを明らかにした。この分析においては、算出が完了した様々な種類の日中の流動性指標等を用いている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度に構築したデータベースを拡充して実証分析を進めるとともに、実証分析を行うにあたり基礎となる理論をより現実的なものに発展させる予定である。前年度の研究において、日中の価格変動の要因分析を試みているが、用いる指標・期間などに改善の余地があり、より頑健な結果が得られるよう、指標の追加および改良、必要であれば開発を行うとともに、分析期間を広げる予定である。株価指数について、指数ベンダーが公表している指数は約定価格を用いており、日中取引の分析を行う場合には指数の遅延の問題が発生することが前年度の分析よりわかっている。この問題を軽減するため、分析目的に適合した指数の算出等を試みる。また、必要に応じて市場データをアップデートするとともに、企業行動に関するデータの整備を進め、両者を連結して市場取引と企業行動の関連についての分析を開始する予定である。
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